研究課題/領域番号 |
23730484
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
菱山 宏輔 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (90455767)
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キーワード | インドネシア / バリ島 / ゲーテッド・コミュニティ |
研究概要 |
平成24年度の研究実施計画においては、夏期にゲーテッド・コミュニティ(以下GCと略記)内の住民属性を把握するためのアンケート用紙を用いた調査、冬期にGC周辺住民についての調査を予定した。 実際には、7月にバリ島にて開催された国際会議“Bali in Global Asia”のセッションでの報告の依頼を受けたため、予定の一部が繰りこされることとなった。国際会議では、GCを含むバリ島の地域セキュリティについて発表するとともに、質疑応答ならびにバリ島についての多面的な報告を鑑みることにより、自らの研究の位置づけが可能となった。滞在期間中には、中心的な調査対象となるGCの住民会議に出席する機会をもち、議題や出席者、議論の進め方から、質的側面でのGC内住民の把握に資する情報を入手することができた。同時に、GC内住民の属性、ガードマンの雇用やインフラ整備状況、ディベロッパーからの書簡等について、地区長から詳細なデータの提供を受けることができた。 1月には、当初夏期に予定していたアンケート調査を実施した。住民の属性については地区長提供の詳細なデータを参照することができるため、調査内容は安全・地位・レクリエーションという三つのSocial Valueを基軸に、住民の認知的側面に重点をおくものとした。作業としてはまず日本語版のアンケート用紙を作成し、それをもとにインドネシア語版と英語版への翻訳作業を経て、その後の校正のために現地大学教員二名の協力を得ていたが、一名の本務校の業務の都合により日程に遅延が生じたため、実際のアンケート用紙配布に際しては中心的な調査地であるひとつのGCへの配布に留まった。回収はすでに研究協力者によって行われており、平成25年度に分析を進め、さらに他のGCへの配布・回収を行う予定である。あわせて、GC周辺住民とGC内労働者へのインタビュー調査を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先述の通り、7月には国際会議"Bali in Global Asia"での報告の依頼をうけたため、報告と調査の準備を同時に進め、現地滞在時においても国際会議への参加と調査の両者を実施したため、当初計画していたアンケート用紙の配布・回収を行うことはできなかった。しかしながら、国際会議での質疑応答や他の研究報告、GC内の住民会議や地区長からのデータ提供によって、研究全体の方向付けをより明確にすることができ、かつ、当初予定していたGC内住民についての把握についてもより具体的なものとすることができた。それらの機会ならびにデータに依拠することにより、1月に行ったアンケート調査の調査用紙をより焦点化したものとすることができた。さらに、今後のデータ分析においても客観性の保持という点に資することとなろう。 1月調査時のアンケート用紙の配布・回収に若干の遅れが生じたものの、上記データを踏まえることにより、平成25年度にはより円滑な研究の進展が見込まれる。GC周辺住民やGC内労働者についての資料収集や該当者へのインタビュー調査については、日本人移民を含めすでにいくつかの事例において開始しており、平成25年度にはいっそう深化させた調査が可能となる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下三つの観点から研究を推進する。 第一に、平成24年度7月にGC地区長より入手した各種データを分析し、GC内における運営、外部との関係についての共通課題を析出することにより、その詳細について地区長および関係する地区住民に聞き取りを行う。 第二に、GC内住民へのアンケート調査を継続する。平成24年度には、中心的な対象地であるひとつのGCにおいてアンケート用紙の配布・現地協力者による回収が行われた段階にあった。そこで、今後はまずそれら調査票を整理し、回収状況の確認を行った後、無回答・非該当への対応や再度の依頼を行う。同時に、他のGCについてもアンケート調査の配布・回収・分析を行う。最終的にはそれらを比較することによって、社会的・空間的モビリティの調整という点から類型化する。 第三に、GC周辺住民とGC内労働者への聞き取りを行う。その際、第一に触れたデータをもとに、キーとなる質問項目を作成し、そのデータならびにアンケート調査によるデータとの比較参照の可能性を担保した質問項目を用意する。 最終的に、それら調査により本研究の総括を行い、社会的・空間的モビリティとともに新たな公共空間の可能性について論じる。あわせて、GC内外の日本人(ライフスタイル)移民の存在という新たな現象を発見するに至っているため、移民における地域セキュリティに関する研究テーマへの発展可能性を踏まえ、次の段階の研究へと接続する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費については、上記三つの研究の推進方策に則して使用されることになる。 第一に、平成24年度7月に調査対象GC地区長より提供をうけた詳細なデータに関する分析・聞き取りについては、派生する質問によって複数の対象者へのインタビュー調査の可能性があるため、交通費ならびに謝金としての支出が予想される。 第二に、平成24年度において実施に至らなかったアンケート調査の準備のための費用として、翻訳・校正作業、印刷費、アンケート用紙配布・回収に伴う交通費ならびに謝金等が含まれる。 第三に、GC周辺住民とGC内労働者の聞き取りについては計画通り行う。ただし、第一・第二の点についての調査・分析の機会を8月滞在時に確保しつつ、特に第一の点を考慮し、最終的な分析結果をより補強することを目的として冬期に追補となる短期間の現地調査を行う可能性があり、これに伴う支出が予想される。
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