最終年度となった平成25年度は、予定した各地の現地調査とともに、研究期間を通じた総括的成果として単著書を公刊した。 群馬県みなかみ町調査においては、「三国山地/赤谷川・生物多様性復元計画(赤谷プロジェクト)」対象地域のみなかみ町新治地区において、聞き取り調査を継続した。聞き取り調査と並行して、平成25年12月に、住民意識調査を全戸配布・郵送回収方式で行い、約400人から回答を得た。みなかみ町調査の成果は、平成26年夏に出版される『(仮題)緑のダム、10年』(築地書館)に寄稿したことに加え、平成24年度から執筆を開始した「赤谷プロジェクト」のとりくみに関する単著書の原稿執筆を継続した。また、平成26年3月に、単著書『環境政策と環境運動の社会学:自然保護問題における解決過程および政策課題設定メカニズムの中範囲理論』を公刊した。 岩手県葛巻町調査においては、前年度までの調査結果をふまえて、共著論文を執筆・投稿した。 再生可能エネルギー分野については、引き続き青森県と岩手県で現地調査を実施した。研究の中間的成果を平成25年6月に環境社会学会大会で発表するとともに、岩手県における再生可能エネルギー事業の動向について、単著論文を執筆し、平成26年3月に公刊した。 岡山県西粟倉村では、山村の生態系サービスを商品化し、主に都市部の購買層へのマーケティング手法を開発している「西粟倉・森の学校」を対象に、長野県飯田市では、公民協働による再生可能エネルギー資源の利活用に関して、それぞれ聞き取り調査を実施した。これら先進地2事例の調査を通じて、環境サステイナビリティの諸理念にもとづく具体的なとりくみが、地域社会の多様な生業戦略を発揮するうえで必要な「地域資源管理」の戦略に巧みに位置づけられることの重要性に焦点をあてる必要があるとの着想に至った。これは次なる研究プロジェクトの課題としたい。
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