研究課題/領域番号 |
23730486
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
石井 清輝 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (30555206)
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キーワード | 街並み保存活動 |
研究概要 |
24年度は昨年度に引き続き、①本研究の分析視角を明確にするための先行研究の整理と理論的な視座の検討、②日本及び台湾の建築・街並み保存活動の実態の調査ならびに社会的、制度的な背景の確認を進めた。 ①について、街並み保存活動は住民運動、まちづくりの一環と捉えられるため、第一にこれらの先行研究を整理し、第二にその理論的基盤となってきた社会運動論の展開を中心に考察を加えた。これらから、現在のまちづくりの社会学的研究においては社会運動論や地域社会論との接点が希薄になり、必ずしも明確な分析視角を設定できていないことが明らかになった。今年度の考察から、街並み保存活動の事例分析においては、地域組織、NPO、ボランタリー・アソシエーションなどの形成過程、相互の交渉過程に注目しつつ、関与する人々の日常的な意識や活動を支えるネットワークを解明していくことが、理論的にも求められていることが明確になった。 ②について、日本では調査候補地の予備調査を進め、日常的な保存活動の状況や活動を継続する上での障害、困難などについての基礎情報の収集を行った。これらを踏まえ、上述の観点から25年度に本調査を実施する予定である。台湾については、第一に制度的、社会的背景の解明を、第二に昨年度に引き続き各地の保存活動の実態の確認を進めた。これらから第一に、保存活動は1990年代以後の台湾意識の高まり、制度的な整備が進む中で、次第にコミュニティ形成(社区造営)運動と統合されて各地に広がっていったこと、第二に、グローバリゼーションに伴う都市再開発の手法の一つとして、建築物の保存活用が選択されている実態が明らかになってきた。ただし、街区整備に伴う観光化や地価の上昇によって既存生活の継続が困難になる、保存のガイドラインが未整備だったために逆に景観の破壊が進む、等の地域問題が発生しているケースがあることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の24年度計画では日本、台湾共に23年度の理論的検討、予備調査を踏まえ本調査を実施する予定であったが、以下の理由から理論的検討、調査の双方に遅れが生じている。まず、理論的な考察については、当初想定していた以上に住民運動やまちづくりに関する理論的研究が未整備だったこともあり、社会運動論も含めた理論研究を継続する必要性が生じた。そのため、24年度も理論的な検討を継続し、調査活動の進行に遅れが生じた。台湾に関しては、日本語による保存活動に関する社会学研究はほとんど無く、制度や実態確認等の基礎研究を進める必要があった。また、当初計画では関係者にインタビュー調査を実施する予定であったが、渡台時間の確保が困難であったことに加え、活動関係者との接触の困難さが調査実施の遅れに影響した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究について、理論的検討については25年度の前期に研究成果として論文の投稿を予定している。日本の保存活動の調査に関しては、24年度に実施できなかった側面も含めて本調査として実施していく予定である。台湾に関しては当初の計画を変更し、保存活動を生み出す制度的、社会経済的背景の解明を重点的に進める。また、各地の保存活動の実態確認、資料収集等に加え、関係者へのインタビューも継続して試みていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
理論的な書籍及び調査対象地に関連する書籍、資料購入のための費用を物品費として、台湾における実態確認、調査のための旅費の使用を計画している。また本調査実施の際の謝礼の使用を予定している。
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