研究課題/領域番号 |
23730489
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
浜本 篤史 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (80457928)
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キーワード | 補償 / 観光 |
研究概要 |
2012年度は、本研究計画における中心的な事例と位置付けている旧緒川ダム(茨城県)予定地で現地調査をおこなった。また、事例対象を旧清津川ダム(新潟県)に広げることとし、その基礎調査をおこなった。いずれも、前年度に調査研究を進めた旧中部ダム(鳥取県)との比較分析を進めるためである。 これらの事例は、長年のダム計画によって翻弄されてきた地域社会が対象である。そして、中止になった際に予定地住民から慰謝料(精神補償)が求められ、しかし、実際には法的枠組みがないために地域振興のメニューでその代替策がとられた点で共通している。とはいえ、その地域振興策の実施スピードという点で、さらに行政不信に対する回復努力という点で、予定地住民への対応は十分でないところが改めて確認された。 また、このような中止をめぐる一連の動きを捉えるためには、地域社会の側からだけではなく、行政側における政策評価の枠組みについて検討する必要があるが、機会を得て、評価研究の分析手法を一部に取り入れる作業を進めた。さらに2012年度は折しも、環境社会学会において東日本大震災をめぐる被害構造について議論が展開されており、これを参考に、予定地住民における被害経験の時系列的な分析を検討することができた。ほかに、日本同様のダム大国であるスペインで水源地域活性化と観光についての現状を把握し、海外事例の視点から日本の特殊性を位置付ける試みをおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災の影響により、旧緒川ダムを事例とすることについて、2011年度は再検討することを余儀なくされたが、2012年度の年度末にもなると調査可能な環境が整ったため、やや遅れてではあるが、前年度の遅れを取り戻しつつある。 一方、他の事例についての調査機会や、理論的検討をおこなう環境に恵まれたため、トータルでは順調に進んでいるといってよいだろう。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、これまで進めてきた事例研究をさらに深め、そこで得られた知見を統合する段階にある。また、事例対象は本研究計画の当初から位置付けてきた緒川ダム、中部ダムのほか、2012年度に調査機会を得られた清津川ダム、川辺川ダム(熊本県)にも広げ、4事例とすることにしたい。具体的には以下の内容を進めていく方針である。 (1)緒川ダム、中部ダム、清津川ダム、川辺川ダムでの聞き取り調査をさらに深める。 (2)公共事業の見直し論として、法的枠組み、補償も含めた問題把握をおこなう。 (3)被害構造論および受益圏・受苦圏の理論的な検討をおこなう。
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次年度の研究費の使用計画 |
以上のような計画に基づき、研究費の大部分は現地調査の旅費が占めることになる。そのほか、行政機関等や関連機関への聞き取り調査や資料収集、さらには学会参加等のための旅費がやはり必要になるだろう。
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