本研究では、戦後日本のダム事業を念頭に、地域社会・住民にいかなる影響をもたらすのか、既存研究を統括し、概念化をはかることを目的とした。ダム事業を社会的影響の観点から捉える際には、事業遂行の場合と、凍結・中止になった場合とに分ける必要があるが、後者については、中部ダム、緒川ダムなどの現地調査も実施した。結果、(1)予定地としての影響、(2)生活再建における影響、(3)水源地活性化をめぐる影響、(4)事業見直しによる影響、(5)事業中止の影響、以上に分類して社会的影響モデルを整理した。また、これらを貫く最大の問題として、事業の長期化、また、それにともなう予定地住民における人生時間の収奪を指摘した。
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