本年度は、均等待遇を実現させるために必要な政策ツールである職務分析・職務評価に関するアンケート調査の実施・回収、データの入力・分析作業を行なった。加えて、調査対象企業の人事制度と職務評価の関連に特に注目することによって、日本の雇用慣行や人事制度下においても実現可能な職務分析・職務評価調査であり、なおかつジェンダー平等を実現させられる制度としてどのようなものが望ましいのかを考察することができた。 本調査・研究によって明らかとなったのは次の諸点である。①3つの流通業者において、事業所長から新任のパートタイマーまでを包摂できる職務評価ツールを開発することによって、それぞれの役職や職能等級ごとの職務評価点を算出できた。②統一された調査票を用いることによって、3つの流通業者で採用される異なる人事制度の下での、労働力の配置や賃金等の状況を明らかにするとともに、それらと職務評価点の関係性を考察することができた。ここからは、すでに役割等級制度をもつ企業では、役職と職務評価点は比例しており、制度的に親和性が高いと考えられることが分かった。そしてこれらの諸点より、③日本の雇用慣行やさまざまな人事制度のもとにおいても職務評価は有効であることともに、なお残る課題点を明らかにすることができた。これは日本の雇用慣行や法制度のもとでも実現可能な職務評価制度の在り方を考察する際に欠かせない知見となった。また、④現行のパートタイム労働法等を検討することにより、現行法や現行の政策における均等待遇、同一価値労働同一賃金原則の位置づけを整理することによって、職務分析・職務評価の日本における活用の方策を検討した。
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