前年度に引き続き、知的障害者支援団体への参与観察を継続するとともに、関東圏の知的障害者の自立生活支援団体の活動や個々の当事者、介助者の状況についての調査を行った。また同時に、就学運動(どんな障害があっても普通学級で同じように学ぶ環境を求める運動)についての調査も一部行った。 ここから明らかになったことのひとつは、重度あるいは軽度の知的障害・精神障害の当事者が自立生活するのを支援するというとき、ヘルパーたちが直面しがちな感情的な諸問題には、ジェンダーによる違いがそれなりにあるということである。知的障害当事者で自立生活をしている人の中には男性がまだ多いこともあり、これまであまり表面化してこなかったが、社会的地位に価値を置く人たちと、周囲の人との関係性に重きを置く人たちとでは、介助者たちが直面させられる課題も異なってくる。 もうひとつには、介助者の側の感情面・心理面での負担感は、給与の問題だけでは解決しないことである。介助やケアという仕事が、いわゆる専門性に依拠する形ではなく、それでも一定の遣り甲斐や積み重ねを感じられるものとしていくための介助論が必要であり、そのためにはベースとなる組織のありようについて問うことが不可欠である。 さらに、これまでの知見をまとめていくために、社会学の理論的な基礎を改めて検討し直した。シンボリック相互作用論の可能性と限界について考察すると同時に、システム論等の検討も行った。また、さまざまな形でなされる社会的排除について、事例検討と理論について学び、支援と差別や排除との関係性について検討した。また同時に、ベースとなる組織のありように関して検討するため、再度組織論を検討しなおした。 理論的な考察を含めた成果発表については、査読雑誌に投稿を試みたが、まだ成果とはなっておらず、雑誌論文以外の形も含めて、成果の公表の仕方について現在検討中である。
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