研究課題/領域番号 |
23730498
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
池本 淳一 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (90586778)
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キーワード | 中国 |
研究概要 |
本年度は予定していた上海市での調査を2012年12月21日~2013年1月4日に実施した。結果、1684サンプル(武術学校1044、体育学校243、普通学校397)を得た。これは前年度の重慶調査のサンプル数1698とほぼ同数であり、当初の目標サンプル数を大幅に上回るものである。 しかし上海調査では当初予定していた芸術学校への調査が実施できず、芸術学校の上海・重慶の比較研究を行うことはできなくなった。そこで今後、芸術学校は地域比較の対象から除外し、体育・普通・武術学校との学校比較研究にのみ使用することにした。 また本年度は前年度に実施した重慶調査のデータの一部を用いた以下の研究を発表した。1.2012年4月、台湾身体文化学会主催「2012北港媽祖節慶與文化國際學術研討會」において「中国伝統身体文化的現代化與資本化-以従郷村公立小学転移到大城市武術学校的学生為例」を口頭発表。2.査読付き論文「現代中國城市與武術文化的再生産-以武術学校與各類学校的比較為例-」が台湾身体文化学会編『運動文化研究』第20期に掲載。3.「武術学校のエスノグラフィ――再生産戦略とアイデンティティ構築の視点から――」が日本社会学会編『社会学評論』254号(2013年9月発行)に掲載決定(2012年11月23日掲載決定)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では上海・重慶の調査で2400サンプルを目標にしていたが、これらの調査を終えた現在、それぞれ約1600サンプル、合計約3382サンプルを得、目標サンプル数を約1000上回る成果を得た。また現在までに、重慶調査を用いた研究成果を発表することができたが、その内容も本研究が課題としていた社会階層と学校選択・職業選択との明確なつながりが見いだせるものであり、「スポーツと社会階層」研究として十分な成果を得ることができた。加えてこれまでの分析から、両親の職業的地位だけではなく、農村から都市への移動経験が学校選択に大きな影響を与えていることが明らかになった。これは中国において「不利な立場」に立つ人々(農村戸籍者)の社会移動が地理的移動と学校制度(特に職業学校)を媒介にして達成されることを示している。これらの結果は、中国における移動と社会階層に関する関係を考察するさいの重要なケース・スタディとなりうるものである。 これらの進捗具合から、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、予定していた調査はすべて終了した。今後はこれらの調査結果をまとめる段階に入るが、さしあたり2013年6月1日、2日に日中社会学会(成城大学)での学会発表が決定している。また現在、2013年度の科研費出版助成に向けて、これまでの武術学校の質的調査に、重慶・上海での武術学校の調査データを加えた著作を執筆中である。これと並行して、重慶・上海調査の地域比較をメインにした論文を執筆中であり、2013年度中に適切な学術雑誌に投稿予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上海調査では、当初、日本でのデータ入力を予定していたが、研究協力者である陳宝強助教授の尽力により、彼の母校である上海体育大学の学生にデータ入力のアルバイトを頼むことができた。そのため、当初よりも調査データの処理が格安でできることになったために、本年度の研究費を節約することができた。 同様に昨年度(2011年)の調査でも、中国国内でのデータ入力を通じて研究費を大幅に節約することができた。これら昨年度、本年度の研究費の残り、そして来年度(2013年)の研究費を用いて、来年度は研究協力者の陳宝強助教授(西南大学)との国内学会での共同発表(2013年6月2日、日中社会学会大会)及び適切な国際学会での発表を計画している。また武術学校設立の背景および武術と学校との歴史的背景を調べるために、中国語図書の購入も計画している。
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