研究課題/領域番号 |
23730500
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研究機関 | 富士常葉大学 |
研究代表者 |
山本 早苗 富士常葉大学, 環境学部, 講師 (40441175)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 環境社会学 / 西部大開発 / 災害文化 / 開発文化 |
研究概要 |
本研究は、グローバル化による定住と移動のダイナミズムを背景に、現代中国社会において災害と開発を契機にローカルな社会に形成される災害文化/開発文化に着目することで、あらたな社会関係が構築されていく過程と社会的排除のしくみについて環境社会学的に分析することを目的としている。 具体的には、西部大開発の住民参加型開発プロジェクト(棚田建設)が、ローカルな社会関係にどのような矛盾をもたらし、それに対して人びとがいかに対応しているのかを明らかにする。これらを明らかにするために、国と行政の資料から、棚田建設の概況およびプロジェクト実施をめぐる合意形成に関する問題点を整理した。 さらに、これまで行ってきた住民への聞き取りと現地で収集した資料を通じて、開発実施過程において、農村部の多民族間にどのような協調関係や対立関係が形成されているのかについて考察した。漢民族への同化をはかる包摂の過程と少数民族に対する社会的排除のしくみを解明するための基礎データの整理を行った。 本年度は、おもに、これまでの調査で得たデータや国内で収集した文献資料、さらに本年収集した最新の統計データや文献・論文などを整理・分析し、研究目的で挙げた調査項目についてより詳細な計画を作成し、次年度から本格的に着手するフィールド調査の準備に力を入れた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本研究を本格的に実施してゆくための準備に力を注いだ。まず、中国西部大開発および中国村落研究の文献・資料の収集を精力的に行い、先行研究の読み込みと研究史の整理を中心に行った。また、国内の学会や研究会に参加し、中国研究者や災害研究者との学術的交流を深め、協力関係を築くことができたので、今後の研究計画をより綿密に練り直すことにより、当初の計画の不足を補うことができた。 ただし、本年度に予定していたフィールドワークについては、学務の理由から長期間、海外調査に出ることが叶わず、その補足を補うために、調査対象地に関する文献や最新の統計資料等を入手して、次年度から行うフィールド調査の準備を進めることにより、計画の遅れを取り戻すよう努めた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果について、日本社会学会等で発表するとともに、前年度の成果を踏まえつつ、8月頃に2週間程度現地調査を行う。本年度は、西部大開発の住民参加型開発プロジェクト(棚田建設)が、ローカルな社会関係にどのような矛盾をもたらし、それに対して人びとがいかに対応しているのかを明らかにする。 フィールド調査の中心となるのは、エスノグラフィの作成である。すでに予備調査を終えている甘粛にて、地域住民を中心に聞き取り調査を行う。具体的には、開発実施過程において、農村部の多民族間にどのような協調関係や対立関係が形成されているのかを解明する。漢民族への同化をはかる包摂の過程と少数民族に対する社会的排除のしくみを明らかにする。 帰国後は、上記の調査内容を総括して、学術論文の投稿を目指し、調査で得られたデータの分析に努める。また、論文執筆に向けて、随時、国際・国内学会などで口頭発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に文献や資料を集中的に購入しており、基礎的資料は手元にあるが、本研究を進めていく上で不可欠な文献や最新の研究動向を把握するために、引き続き、文献・資料収集を行う。 本年度は、学務のために、当初予定していた現地調査を行うことができず、研究費の未使用額(63,163円)が生じたが、これは次年度に繰り越して、フィールド調査費用に算入して使用する予定である。 次年度の研究費については、フィールド調査を集中的に行うことに最も力を入れる。調査に係る経費および、国内外の学会・研究会の旅費を中心に使用する予定である。 中国の政治情勢によっては、フィールド調査計画について適宜、見直しを加えたり修正しつつ調査研究を進めるなどして対応する。
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