本研究は、グローバル化による定住と移動のダイナミズムを背景に、現代中国社会において災害と開発を契機にローカルな社会に形成される災害文化/開発文化に着目することで、あらたな社会関係が構築されていく過程と社会的排除のしくみについて環境社会学的に分析することを目的とする。具体的には、2000年以降、中央政府が推進している一大国家プロジェクトである西部大開発戦略の住民参加型開発を事例に取り上げて、国家と地域社会との相克過程を描きだすとともに、グローバル/ナショナル/ローカルな力のせめぎ合いを捉えることを目指した。 本年度は、中国西北部に位置する甘粛省と新疆ウイグル自治区および北京にて実施してきた農山村でのフィールドワークの調査内容と統計データや行政文書を整理し、日中社会学会や日本社会学会等で研究報告を行った。また、これまでの調査成果をまとめて、学術雑誌にレフェリー論文を投稿し掲載された。 本研究では、都市と農村を往復しながら移動生活を営む人びとが形成するコミュニティに注目することで、民族間の包摂/排除の関係および文化混淆の実態を明らかにし、転換期における社会変動のダイナミズムを明らかにした。これらを明らかにすることを通じて、中国の開発/環境(災害)政策のもと、民主的なしくみを目指すローカルな人びとの主体性を捉え直し、地域を超えていくコミュニティのダイナミズムを理解することが可能になった。最後に、中国社会における新たなガバナンスのあり方を提示した。
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