研究課題/領域番号 |
23730503
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
南川 文里 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (60398427)
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キーワード | 社会学 / コミュニティ / 人種 / アメリカ合衆国 / 多文化主義 / 国際情報交換 / 都市 / ロサンゼルス |
研究概要 |
平成24年度は、多人種コミュニティとしてのリトルトーキョーをめぐる実証研究を中心に、理論的には、多人種コミュニティ論からアメリカ型多文化主義論への発展、実証的には、第二次世界大戦前・戦中・戦後の日系人のコミュニティ形成の長期的変遷と二つの多人種コミュニティの形成、という二つの課題について進められた。まず、理論研究では、本研究課題によって提案された「多人種コミュニティ」論を、将来的に「アメリカ型多文化主義」論へと接続するための理論的検証が進められた。本研究では「アメリカ型多文化主義」の特徴を、都市における草の根的な集団間関係と冷戦期のアメリカ型リベラリズムの融合としてとらえる視点を提案し、多人種コミュニティの研究は、まさに「アメリカ型多文化主義」のルーツをさぐる作業となることが示された。また、実証研究では、2012年8月にはカリフォルニア大学ロサンゼルス校図書館を中心とした海外資料収集・調査を行った。この調査では、主に1940年代の戦時在米日系人強制収容が、戦後のコミュニティ形成にどのような影響を与えたのか、という点を中心に資料収集を行った。ここで収集した史料の検証を通して、戦時強制収容によって日系人社会に植え付けられた「コミュニティ」をめぐる意識が、戦後の二世リーダーによるコミュニティ再建の基本理念となり、その矛盾といかに対峙するかが、戦後日系人社会の課題となったこと、そして、そのコミュニティ概念こそが、「エスニック・コミュニティ」型の多人種コミュニティとしてのリトルトーキョーを支えるものとなったことが明らかになった。戦時強制収容におけるコミュニティ概念とはどのようなものであったか、それがいかに戦後の日系人社会の意識を規定したのかについて論文を2本発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、平成24年度は、「多人種コミュニティ」をめぐる実証研究を中心に進めた。リトルトーキョーおよびクレンショーという2つの「多人種コミュニティ」の特色を、日系人の歴史的経験の文脈に位置づけて検証することができた。また、同時代の黒人などの非日系人マイノリティや公民権団体などの歴史的経験を検討するための資料も収集でき、次年度以降のさらに詳細な実証研究の準備も整った。理論的には、多人種コミュニティ論を「アメリカ型多文化主義」論へと発展させる視点が提起され、本研究を、都市コミュニティ研究としてだけでなく、多文化社会をめぐる歴史社会学・比較社会学的研究へと結びつける可能性が生じ、当初の理論的射程をより広げることができた。また、調査や学会発表を通して、多くの海外研究者と意見交換することで、本研究課題の意義を再確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究課題の最終年度にあたるため、多人種コミュニティとしての2つの地区の比較研究を中心に、本研究課題の実証的検討と成果発表を中心に進める。具体的には、多人種コミュニティとしてのクレンショーの経験を中心に、1950年代から60年代にかけての多人種コミュニティを支えた条件を考察する。さらに、リトルトーキョーとクレンショーという2つの地区の比較を中心に、多人種コミュニティ論の視点を提案する論文を発表する。最後に、「多人種コミュニティからアメリカ型多文化主義へ」という観点から、本研究課題を次年度以降さらに新しい研究課題へと接続させるための理論枠組の検証を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も研究費の使用計画として、海外調査および成果発表のための旅費(アメリカ合衆国)を中心に、参考文献の購入費、校閲等の人件費を支出する。
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