日本型マス・ツーリズムの生成過程をめぐる現代社会における諸事例に着目し、おもにメディアの社会的機能を中心に歴史分析を試みることを主題とした本研究課題では、3年間の研究活動を総括しつつ、研究最終年度にあたる本年度では(1)ツーリズムとメディアが取り結ぶ関係を理論化する作業、(2)フィールドワークによる事例の調査、(3)研究成果のまとめと単著の執筆、(4)国際的な研究交流の準備、の4点をおこなった。 まず上記の(1)に関し、前年度より取り組んできたJ.メイロウィッツのメディア・グローカリゼーションの議論を参照しつつ新たなツーリズム・メディア理論を構想するため、グローカリゼーションとメディア・イメージの政治性に関する国内外の先行研究を吸収することに努めた。さらに(2)に関し、これまで3年間におこなってきた高尾山(東京都)と柴又(同)での調査に加え、新たに写真とツーリズムが取り結ぶ関係を見るフィールドとして嵐山(京都府)および台場(東京都)において資料の収集と聞き取り調査をおこなった。 その結果、J.ラースンの写真とツーリズムに関する先行研究を集中的に学び、現代日本における類似現象の考察という新たな研究テーマを発見することができたため、本年度の後半には日本におけるフォト・ツーリズムの歴史と現在の特徴を把握することに努め、また同テーマに関する単著を執筆することに着手した(上記の(3)に関連)。また(4)に関し、2014年6月には第18回Asian Studies Conference Japanにて研究成果の一部を発表し参加者よりさまざまな知見を得ることができたため、それをもとに査読付き国際ジャーナルへの論文投稿を準備し、上記の単著とあわせて4年間の研究成果を国内外で発表する作業を進めている。
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