本研究課題は、「地方」の非集住的環境において生活する在日コリアンの若い世代(10代後半から30代半ばくらいまで)に対して参与観察とインタビュー調査を行い、エスニシティの形成と日常生活のなかで経験する差別の実態を把握することにある。その際、エスニシティの問題が地域社会の日常的リアリティのなかでいかに諸個人に対して回帰してくるのかを分析することを通じて、ナショナリズムや差別の現代的特徴を明らかにすることを目的とする。平成25年度は、平成23~24年度までの研究調査を継続して実施するとともに、前年度までのデータ整理を行った。また、この間には在日コリアンと日本人のあいだに生まれた「ダブル」の若者たちの聞き取り調査も実施することにより、「非集住地区」という当該研究計画の枠組みをさらに鍛え直していくような視点も得られた。今後の課題として、非集住的環境で生活する在日の人びとを、地域やエスニシティという単一の枠組みに回収するのではなく、様々な社会的領域が交錯する現実からとらえ直していく必要性があることが確認された。 本年度は、これらの研究成果を学術書(単著および共著)にまとめるとともに、国内の多数の研究会等において報告を行った。また、申請以前からの研究とこの3年間の研究調査をまとめて出版した単著についての報告会を実施することにより、本研究課題の一つである当該研究調査を実施した地域社会(岡山)にその研究成果を報告、還元することができた。これらの成果に加えて、平成26年度内には本研究課題の成果を学術書(日本語および英語)において国内外に発信する予定である。
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