研究課題/領域番号 |
23730520
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
古井 克憲 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (10553018)
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キーワード | 知的障害者 / 当事者活動・組織 / 自立生活プログラム |
研究概要 |
本研究では、知的障害者の地域生活における体験知と技術を基にした自立生活モデルの開発を目指す。平成25年度は、知的障害者の当事者活動による「自立生活プログラム」の実践事例に関する調査結果を、当事者リーダーの視点からまとめ、学会発表及び論文化した(古井 2013)。要約すると、リーダーにとって当事者活動の意味は、それまであいまいであった自分がしていることと家族がしていることの意識化につながる点、さらにそれによってリーダーが、これから自分ができること・したいこと、自分が周囲にしてほしいこと・できることを考え、発信する地域生活の主体者として立ち上がる点にあった。このような実践は、リーダーどうしの相互作用により促進され、互いに主体者として認め合うセルフ・ヘルプ機能を果たす。結論として、知的障害者による当事者活動の実践は、知的障害者自身による体験知と技術を創造する可能性があると述べた。以上の内容について、日本ではこれまで、知的障害者の当事者活動に関する具体的記述が少ない中で整理された点で資料的価値が高いものであると考える。また、他の類似した実践の参考になる点で実践的価値があると考える。 今後、当事者活動のリーダーを担っている障害者を対象に生活史調査を実施する。彼・彼女らが、「障害者」としてディスアビリティ経験を送ってきたということを念頭におきつつも、ひとりの「生活者」として現代社会においてどのような体験をし、生活技術を獲得して生きてきたのかについて、ストレングス視点にも焦点を当てて結果を解釈しまとめることとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的を達成するため、①当事者活動に関する調査研究と②知的障害者を対象とした生活史調査を計画した。①を入念に行うことによって、「自立生活プログラム」を実践する当事者活動が知的障害者の体験知や技術を生み出す可能性があると分かった。そこから、当事者活動のリーダーを生活史調査の対象者として選定し、②を実施することにした。結果として、①に時間がかかったものの、それによって②を効果的に行うための対象者の選定・調査の実施に着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当事者活動による「自立生活プログラム」のリーダー経験がある知的障害者に対する生活史調査を実施し、彼ら/彼女らからみた、自立生活における体験知・生活技術を抽出する。その成果を、他の当事者にも分かる形でモデル化することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
生活史調査に必要な費用が次年度使用額として残ったため。 知的障害当事者を対象とした生活史調査に係る物品費、謝礼及び人件費に使用する。これまでの研究成果を公表するための費用(学会発表等)にあてる。
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