本研究の目的は、日本のホームレス・生活困窮者支援において求められる支援の内容や課題をふまえて、包括的支援に向けた政策枠組みの検討および理論的分析の展開を行うことにある。平成25年度に行った研究を整理すると、次のとおりである。 第1に、生活困窮者自立支援法の平成27年度施行に向けて平成25年度に全国各地で始まったモデル事業の取り組みについて、現地視察や厚生労働省主催会議等をとおして実態の把握や政策的・実践的課題の検討を行った。 第2に、具体的な支援事業やケース等の分析である。まず、元ホームレスを含む生活困窮者の就労・社会参加支援パイロット事業のケース分析をとおして、支援現場で求められる支援内容、政策や制度に関する課題の検討を行った。次に、ホームレス状態から脱却した後の居宅生活の支援パイロット事業について、複数の都市において支援内容のタイムスタディ、ケースや事業運営の分析を行い、生活再建に必要な支援内容、支援の効果、支援事業や実践の課題についての検討を行った。さらに、生活困窮者に対する具体的な就労機会の提供に関して、大都市と地方都市において取り組み課題を把握し、就労支援や日常生活支援の課題に関わらせて分析を行った。 第3に、平成24年に期限が5年延長されたホームレス自立支援法と、平成25年12月に制定された生活困窮者自立支援法との関係に関する研究である。新たな生活困窮者支援施策の体系のもとでホームレス自立支援法やならびに関連事業がどのように整理づけられるかについて、支援現場や政策担当者へのインタビューや研究者との討論を交えて研究を行った。
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