権利と義務の対応関係を表す互酬性は,シティズンシップを規定する規範として機能してきた.本研究では互酬性をめぐる言説の変遷に注目し,それを権利と義務の関係性から分析することで,各言説の可能性と限界を明らかにするとともに,より望ましい互酬性のあり方を構想した.その結果に基づき,より多様な形での社会参加の実現に向けて,①他者との関係づくりの促進,②生活時間の自由な配分,③労働時間に規定されない所得の確保,④「貢献」概念の拡張を図る必要があることを指摘した上で,そのための政策案の一つとして,ワークシェアリングと支給要件の緩やかな現金給付(究極的にはベーシック・インカム)を組み合わせることを提案した.
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