研究課題/領域番号 |
23730531
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
新藤 こずえ 高知県立大学, 社会福祉学部, 講師 (90433391)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 知的障害者 / 離家 / 家族形成 |
研究概要 |
本研究は、知的障害者が「子どもから大人になる」過程を、青年社会学におけるライフコースの枠組みから明らかにするものである。青年期・成人期における重要なライフイベントである離家と家族形成に焦点をあて、1.知的障害を有する子の親子関係の実態調査、2.社会資源の活用の動向調査、3.ライフコースにおける青年期から成人期への移行過程についての調査を実施する。これらの調査を様々な居住形態(定位家族、入所施設、グループホーム、独居、生殖家族)をとる知的障害者とその親を対象に行い、青年期・成人期の知的障害者が、どのようにして親から離れるプロセスをたどるのか、当事者が様々なライフイベントで主体性を行使する機会をどのようにして持ち得るのか、分析を行う。平成23年度においては、定位家族で親と暮らす青年期・成人期の知的障害者、その親、福祉施設職員を対象として、インタビュー調査を行った。調査地は北海道札幌市である。その結果、以下の諸点が示唆された。第一に、親が高齢化しているにもかかわらず、親は知的障害のある子どもと別居する意思があまりみられないこと、第二に、知的障害当事者はその親の意思を感じながらも、親と離れた自由な空間での生活すなわち離家を希望している者が少なくないこと、第三に、福祉施設の職員は、知的障害者の親離れの重要性を認識しつつ、自立に向けての取り組みをすすめているが、知的障害当事者やその親との関わりの中から、親離れ・子離れの困難さを感じている。その解決のためには、当事者とのかかわりのみならず、親との連携、人的資源や宿泊体験用のグループホームなどの物的資源の確保が求められると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な居住形態(定位家族、入所施設、グループホーム、独居、生殖家族)をとる知的障害者を対象に調査を行う計画であるが、初年度においては、このうち、定位家族および独居の知的障害者にインタビューを実施できた。次年度以降は、他の居住形態をとる知的障害者を対象とした調査が実施できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の遂行を左右する重要な点は、知的障害者については、本人への調査実施の可否、親については、施設入所している知的障害者の親への調査実施の可否である。このことについては、日常的に知的障害者の支援に携わっている福祉専門職などの支援者の協力が不可欠である。それらの協力者とよく話し合いながら、調査対象者とりわけ知的障害者との関係性構築、調査内容の妥当性、対象者の障害特性に応じたコミュニケーションの方法、調査のタイミング等について留意し、知的障害者本人の意思表出を最大限捉えることができるよう、より一層工夫し配慮を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、3年間の研究計画のうちの2年目にあたる。フィールドでの調査にかかわる旅費、物品費、テープ起こしのための謝金等が支出の中心となる。1.旅費等:本研究の調査方法が障害者のプライベートな生活領域に踏み込んで行われるものであることから、ラポールの形成ため、調査対象者には面接調査および参与観察の前段階で複数回接触しておくための北海道と高知県への国内旅費が必要となる。2.物品費:持ち運びに適したノートパソコンが必要となる。3.謝金等:本研究は質問紙調査とインタビュー調査等による質的調査からなる。質問紙調査のデータ入力と、とりわけ障害当事者の語りを正確に記録するための、インタビュー調査のテープ起こしなどに係る謝金が必要となる。
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