研究課題/領域番号 |
23730531
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
新藤 こずえ 立正大学, 社会福祉学部, 講師 (90433391)
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キーワード | 知的障害者 / 離家 / 家族形成 / ライフコース |
研究概要 |
本研究は、知的障害者が「子どもから大人になる」過程を、ライフコースの枠組みから明らかにするものである。青年期・成人期における重要なライフイベントである離家と家族形成に焦点をあて、(1)知的障害を有する子の親子関係の実態調査、(2)社会資源の活用の動向調査、(3)ライフコースにおける青年期から成人期への移行過程についての調査を実施する。これらの調査を様々な居住形態(定位家族、入所施設、グループホーム、独居、生殖家族)をとる知的障害者とその親を対象に行い、青年期・成人期の知的障害者が、どのようにして親から離れるプロセスをたどるのか、当事者が様々なライフイベントで主体性を行使する機会をどのようにして持ち得るのか、分析を行う。 平成24年度においては、独居およびケアホームで生活する知的障害者および福祉施設職員にヒアリングを行うとともに、地域生活を送る知的障害者家族への支援を試行する社会福祉協議会の職員にもヒアリングを行った。その結果、独居の場合は、本人が望んでの自立生活というわけでなく、ケアを担いきれない原家族であったために強いられた自立をせざるを得ないというケースが少なからず存在していること、地域生活を送る知的障害者家族については、本人や家族が知的障害であることを認識しておらず、福祉サービスにつながりづらい状況があり、何らかのトラブルを契機に行政や社会福祉協議会が介入するものの、家族関係や経済面での慢性的な課題を抱えていることが示唆された。したがって、地域での見守り体制や相談支援機能が不十分である場合は、深刻な問題を抱える可能性が高い。家族および当事者の社会階層をふまえ、知的障害者のライフコースを分析する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な居住形態(定位家族、入所施設、グループホーム、独居、生殖家族)をとる知的障害者を対象に調査を行う計画であるが、2年目となる本年度においては、このうち、入所施設(ケアホーム)および定位家族、独居の知的障害者、福祉施設・機関の職員にヒアリングを実施できた。しかし、ケース数が少ないので、次年度は、ケース数を確保するとともに、他の居住形態をとる知的障害者を対象とした調査を実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでと同様、本研究の遂行を左右する重要な点は、知的障害者については、本人への調査実施の可否、親については、施設入所している知的障害者の親への調査実施の可否である。このことについては、日常的に知的障害者の支援に携わっている福祉専門職などの支援者の協力が不可欠である。それらの協力者とよく話し合いながら、調査対象者とりわけ知的障害者との関係性構築、調査内容の妥当性、対象者の障害特性に応じたコミュニケーションの方法、調査のタイミング等について留意し、知的障害者本人の意思表出を最大限捉えることができるよう、より一層工夫し配慮を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、3年間の研究計画のうち最終年度にあたる。フィールドでの調査にかかわる旅費とともに、テープ起こしのための謝金、物品費等が支出の中心となる。 (1)旅費等:本研究の調査方法が障害者のプライベートな生活領域に踏み込んで行われるものであることから、ラポールの形成ため、調査対象者には面接調査および参与観察の前段階で複数回接触しておく必要がある。フィールドである北海道と高知県への国内旅費が必要となる。 (2)謝金等:本研究は質問紙調査とインタビュー調査等による質的調査からなる。質問紙調査のデータ入力と、とりわけ障害当事者の語りを正確に記録するための、インタビュー調査のテープ起こしなどに係る謝金が必要となる。 (3)物品費:データ分析用パソコンとソフトウェアが必要となる。
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