(1)従来の障害者の自立論はライフコース視点が欠如しているため、知的障害者が青年期・成人期という世代にふさわしい生活を送るという選択肢を排除することにつながっていた。(2)当事者と親・支援者の自立観には差異があり、とりわけセクシュアリティと結婚に関して顕著であった。(3)しかし、支援者は、知的障害者の最も身近な他者として、当事者を「大人になりゆく存在」とみなしたうえで、当事者の欲求をくみ取り、代弁する役割を担うべきである。今後、新たなライフコースの可能性を切り開くためには、知的障害者の私的な人間関係の充実、さらに社会的なネットワークを構築することが重要である。
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