研究課題/領域番号 |
23730534
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
木下 武徳 北星学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (20382468)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 公的扶助 / ケースワーカー / 組織環境 / アメリカ / スウェーデン / 国際比較 / 日本 |
研究概要 |
本年度の研究は、ケースワーカーの専門性と裁量性の分析枠組みを構築すること、アメリカ、スウェーデン、日本の公的扶助の政策動向や特徴を明らかにすることである。特に、アメリカの政策動向や特徴については、日米の福祉の民間化政策の視点から特徴をまとめ、また、近年の公的扶助政策の動向をまとめ、さらに、その中における福祉事務所の裁量性の問題に注目して、文献レビューを行った。具体的には次の通りである。(1)「日米における福祉の民間化-市場の導入と今後の課題」『國學院経済学』(國學院大學)、第60巻1・2合併号、2011年5月、pp.203-235.(2)「Privatization of Welfare in U.S. and Japan: Problems of Market Model」『國學院経済学』(國學院大學)、第60巻1・2号、2011年5月、pp.529-564.(3)「海外貧困研究動向:アメリカ福祉改革下における福祉事務所研究」『貧困研究』(明石書店)第6号、2011年6月、pp.112-116。(4)「アメリカ公的扶助おけるワークフェア政策の課題~15年の評価と不況への対応~」『貧困研究』(明石書店)第7号、2011年11月、pp.4-13。 また、スウェーデンの公的扶助については、文献収集をし、現在研究を進めているところである。2012年3月には10日程で、スウェーデンのストックホルムに現地調査にいき、2か所の福祉事務所の担当者より仕事内容や専門性確保等についてお話を伺うことができた。さらに、母子世帯の方に直接インタビューをすることによって、スウェーデンの公的扶助政策および一般の施策との関係を理解することができた。 さらに、日本の生活保護の動向については、民間団体の実施した稼働年齢層の生活保護利用者調査を木下が集計分析をしたが、このデータをさらに分析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福祉事務所の大きな分析枠組みの構築に参照すべく、福祉組織論で著名なハッセンフェルド氏の論文を翻訳した。アメリカの福祉政策・公的扶助政策の動向や福祉事務所、ケースワーカーの裁量性や専門性に関する研究について、論文を作成することができて、一定の整理を示すことができた。また、アメリカの福祉事務所研究については、日本社会福祉学会にて報告することができた。(「公的扶助における前線ワーカーの裁量問題-アメリカ福祉改革の実施過程に関する文献調査から-」日本社会福祉学会第59回大会、2011年10月9日、千葉県・淑徳大学千葉キャンパス) さらに、スウェーデンの福祉事務所に実際に訪問することができて、調査研究の足がかりができた。そして、日本の生活保護の分析についても、生活保護利用者の分析のきっかけができた。これらに関する分析については、次年度に論文作成をしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず、スウェーデンの公的扶助政策の文献研究及び福祉事務所の在り方について文献研究を進め、スウェーデンの福祉事務所およびケースワーカーの業務内容や利用者との関係等について、現状と特徴をまとめ深めていきたい。なお、本年度の母子世帯の調査をして明らかになったが、公的扶助以外の普遍的な福祉サービスや給付によって生活の多くがカバーされており、日本やアメリカと公的扶助の位置づけが異なることを明確にしていくようにしたい。次に、私がかねてからフィールドにしているアメリカのカリフォルニア州およびウィスコンシン州の福祉事務所に訪問調査をして、近年の福祉事務所の動向やマニュアル、ケースワーカーの意識について調査をする。特に、公的扶助の手続きの仕方について注目する。最後に、日本については、近年の生活保護政策の動向について、整理をしつつ、福祉事務所の在り方について、札幌市や北海道を中心に事例検討を進めていく。特に、近年議論の焦点になってきている稼働年齢層における生活保護の運用について明らかにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の主な使用計画については、第一にスウェーデンやアメリカの文献研究のために、やや高めの洋書を購入することになる。また、必要に応じて、翻訳のないスウェーデン語のマニュアルについては、日本語への翻訳を依頼する。この場合は、翻訳料がかかる。また、近年、貧困問題や公的扶助を扱った文献が多数出版されるようになってきており、これらの主なものについては入手をしていきたい。そのため、図書費等にも第二に、アメリカのカリフォルニアとウィスコンシンへの現地訪問調査を行う。このための旅費・宿泊費がかなりかかることになる(35万円程の予定)。さらに、学会発表や研究会参加のための旅費がかかる(20万円程度の予定)。また、研究の効率的に進めるために、PDFデータに直接記入できるソフトAcrobatを購入する。
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