研究課題/領域番号 |
23730534
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
木下 武徳 北星学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (20382468)
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キーワード | ケースワーカー / スウェーデン / 福祉事務所 / 組織論 |
研究概要 |
2013年度の研究目的は、スウェーデンと日本に関して、具体的に福祉事務所のケースワーカーの組織環境について調査をすることであった。そのために、2014年3月16日から27日にかけて、スウェーデンにおいてインタビュー調査を実施した。今回の調査では、スウェーデンでは、行政のみならず、民間団体も含めて福祉現場で働くためには、大学等での3年の座学と6か月の現場実習によって得られる有資格ソーシャルワーカー(ソシオノーム:Socionom)が不可欠の条件となってきていることがわかった。スウェーデンでは、一般にソーシャルワーカーとして職種採用されていることに加え、専門資格も有効に機能している。また、公民のソーシャルワーカーが同一の産業別の労働組合に加入し、実質的に組合が専門職団体としても機能していることが、その専門性を労働条件の面から裏付けをしていると言える。このあたりは日本とは大きな違いを見せていることが分かった。 日本の調査研究に関連しては、2013年度は生活保護法改正および生活困窮者自立支援制度創設の議論もあり、貧困研究会や日本社会福祉学会等での報告や論文掲載の機会を得ることができた。そのため、ケースワーカーの置かれている状況について、まだ途中ながら、研究成果の一部をいくつか報告することができた。 具体的には、①「アメリカにおける公的扶助の政策課題~TANFの利用実態と就労インセンティブ政策の問題~」『総合社会福祉研究』(総合社会福祉研究所、2014年3月、pp.68-78)、②「2013年生活保護改革の概要と問題点」『北海道自治研究』(北海道地方自治研究所、No.534、2013年7月、pp.25-31)、③「基調報告:福祉事務所と民間福祉の役割と協働~アメリカでの議論を踏まえて~」『貧困研究』(明石書店、第10号、2013年6月30日、pp.70-78)などである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2013年度には、生活保護法改正法や生活困窮者自立支援法の成立し、その成立以降はその具体的な実施の条件やその影響等の検討が求められる状況になってきた。とりわけ、生活困窮者自立支援制度については、本研究が対象としている福祉事務所のケースワーカーの役割にも大きな影響を及ぼす可能性が高い。福祉事務所のケースワーカーの組織環境を検討するためには、これらの影響を考えていくことが重要な課題となってくるために、生活困窮者自立支援制度のモデル事業についても対象を広げ、福祉事務所やケースワーカーの役割を考えていく必要が出てきた。したがって、これらの点についても今後の調査研究において深めていきたい。 一方、スウェーデンの調査研究については、インタビュー調査等から、ソーシャルワーカーの専門職資格の有効性、職種採用、専門職団体となっている労働組合への加入という点がスウェーデンの福祉現場に専門性を高める効果を発揮していることが分かった。次には、福祉事務所のケースワーカーの職場の具体的な条件についても研究を深めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度は、日本での生活保護改革の動きもあって、日本の制度改革の実態や影響について検討する作業に時間を費やしてしまったが、これまでの本研究のプロセスを通じて、日本はもちろん、スウェーデンやアメリカの研究者や現場職員ともつながりも深まってきた。また、次年度は、最終年度となるため、これらのつながり、信頼関係を通して、現場職員への詳細なインタビュー調査やアンケート調査を実施していきたい。 さらに、最終年度となるために、これまでの研究成果をしっかり論文としてまとめる作業を行っていきたい。アメリカのウィスコンシン州の調査については、一昨年度のインタビュー調査を踏まえた論文作成、スウェーデンについては上記に記載した環境の違いについて、日本については、福祉職採用の動向を踏まえた調査と、生活困窮者自立支援制度と福祉事務所の関係について整理して論文を作成していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
スウェーデンの調査研究で、前に通訳をお願いしていた通訳者が日程の都合が合わないために、通訳者を2人に通訳を依頼したために、通訳謝金が高くなると考えて、前回よりも少ない単価でお願いしたこと。また、国内の調査研究が遅れ気味で、国内旅費の支出が少なかったことによると考えている。 繰越資金が2万9041円と3万円以内である。この分については、次年度より、消費税が増額しているために、全体として支出が増加するために、これに充当して支出が可能であると考えている。また、次年度は最終年度になるために、先に示した国内の調査研究の遅れを取り戻して研究計画に応じて研究を進めていけるようにしたい。
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