本研究は、ケースワーカーの専門性と裁量性の分析枠組みから、アメリカ、スウェーデン、日本における公的扶助制度の動向や特徴を踏まえた上で、福祉事務所の裁量性の問題を明らかにすることである。 本年度の主な調査研究としては、アメリカの福祉事務所のケースワーカーに対して、インタビュー調査を行った。調査期間は、2015年3月17日から3月27日にアメリカに訪問した。民間も含めていくつか福祉関係事業所を訪問調査するなかで、3月19日にロサンゼルス・カウンティ(LA郡)の社会サービス部本庁にて、ケースマネジャー5名へのインタビュー調査を行った。LA郡では資格審査・現金給付担当職員よりも、ケースマネジャーの方が給料は高く優遇されており、その後スーパーバイザーやコーディネーターになるというキャリアアップの筋道が明確になっている。そういう意味で、資格審査・現金給付よりも、ケースマネジメントは直接の支援につながり、やりがいのあるものになっていた。 また、3月24日には、ウィスコンシン州ミルウォーキー・カウンティのケースマネジメントの民間委託を受けているUMOSにて、4名のケースマネジャーのインタビュー調査を行った。州政府により年間最低24時間の研修が義務付けられており、DVや依存症問題等の対応についても理解している。そもそも対人援助の仕事のために、コミュニケーション力が必要であり、常に学習をしていく姿勢が必要であると強調されていた。 本年度はこれまでのインタビュー調査をまとめ切れていないため、以下の公的扶助制度の運用の流れについて論文を作成したのみになってしまった。今後、調査結果を踏まえて裁量性の問題についてまとめていきたい。 「ウィスコンシン州における福祉事務所の民間委託の変遷-NPMからみたW-2委託契約の分析を中心に-」『國學院経済学』(國學院大學)、63巻2号、2015年3月、pp.83-129
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