本研究は児童養護施設(以下、施設)における自立支援への取り組みの実態とその効果を明らかとし、施設退所後の児童の抱える問題へのインケア及びアフターケア、退所後の支援の在り方を検討するものである。 2016年度は①施設退所者への追加インタビュー調査、②退所者インタビュー調査結果報告、③退所者支援団体へのインタビュー調査を実施した。また、インタビュー調査の結果の一部を日本社会福祉学会秋季大会、子どもの権利条約総合研究所大会にて報告を行った。 調査結果として以下のことが明らかとなった。「自立」を語るときには当事者の考える「自立」は一般に語られている「自立」とは異なり、「やっていける思い」が退所者にとっては重要であることが分かった。そのため、一般的に語られている「自立」ではなく退所者の思いを尊重していく必要があり、「やっていける思い」の支援が求められる。その前提として施設でのインケアにおいては、職員との愛着関係、施設への思い、施設入所理由の理解と受け入れ、退所時の支援が重要なポイントであることが分かった。また、インケアの段階で支援困難であったケースにおいては、退所後に施設とのかかわりの中で職員や施設への考えが変容し、職員や施設を受け入れることができるようになることで施設で育った自分を受け入れられるようになる変容過程が見られた。そのため、退所後も何らかの形で職員や施設が退所者に関わり続けることが「やっていける思い」の支援となることがわかってきた。
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