研究課題/領域番号 |
23730549
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
宮古 紀宏 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助教 (60549129)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 矯正教育 / カリフォルニア州 / 多機関連携 / 修復的正義 |
研究概要 |
研究課題である日米の少年矯正の比較研究のため、米国の教育施設等の訪問調査を実施した。主な調査先は、カリフォルニア州ソノマ郡の少年司法センター(Juvenile Justice Center;JJC)、非行少年を対象としたオルタナティブスクール、少年の更生を目的としたNPO法人Restorative Resourcesであったが、その他、ソノマ郡やサンタローザの教育委員会、キャリア教育を精力的に展開している小中高等学校をも訪問し、聞き取り調査を行った。主な調査先であったソノマ郡の少年司法センターでは、少年裁判所と矯正施設(Juvenile Hall)が同一建物内に併設されている。矯正施設では、矯正職員(Juvenile Correctional Counselor)の処遇だけでなく、ソノマ郡教育委員会と連携して、学校教員を常駐させ、教科教育に力を入れており、復学への対応に力点が置かれていた。学校教育と矯正、司法の連携がシステマティックに取り入れられており、社会復帰への有効性の期待を感じることができた。また、サンタローザ市教育委員会とその管轄区域内にある2つのオルタナティブスクールの取り組みを実地調査することで、少年司法機関に係属する前の段階での、非行少年の処遇の流れを追うことができ、非行からの立ち直りに関する教育施設を総合的に把握することができた。加えて、NPO法人Restorative Resourcesへの訪問調査により、少年司法への関わりと修復的正義に関する教育プログラムについて調査をすることができた。また、事後的対応のみならず、子どもの健全育成として、小学校に修復的正義の理念に基づいたいじめ予防プログラムを展開しており、地域連携の重要な一翼をNPO法人が担っている状況をうかがうことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の主要なテーマである日米の矯正教育の比較研究として、まずは2011年度において、米国カリフォルニア州の複数の教育関係施設を参観することができ、その進度はおおむね順調に進展しているということができる。また、2011年度は、矯正教育という研究対象を超え出て、米国の学校教育、教育委員会、NPO法人等、関係機関における非行少年への指導・支援を調査することができ、よりマクロな観点から米国の矯正教育が置かれている文脈を検討することができた。とりわけ、矯正という一行政組織が、学校教育や福祉機関、また、少年裁判所といった司法機関と、どのような連携が図られ、非行のある少年の社会への復帰、再統合がはかられているのかを、検証するうえで、その素地となりうる訪問調査を広く展開することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、2011年度は米国への調査研究に力点を置きすぎたため、日本国内への調査研究を、予定していたほど進めることがかなわなかった。その点が、今後の課題と考えている。2012年度は、引き続き、米国の矯正教育と各関係機関について、訪問調査・文献調査の両面から行うとともに、国内の少年院、保護観察所への訪問調査を行い、その処遇の内実とともに、評価の仕組みの実態を明らかにしていく予定である。米国については、引き続きカリフォルニア州への補充調査を考えている。2011年度の調査において、教育プログラムをはじめ、矯正等の制度全体がどのような成果をあげているのかを確認することが不十分であった。2012年度では再度カリフォルニア州を訪問し、システム等の効果検証という観点から補充調査を実施したいと考えている。日本については、長期処遇、短期処遇の初等中等少年院、また、特別少年院等の教育プログラムを調査するとともに、各少年院と保護観察の連携のみならず、地域連携の現状についても調査を進める予定である。これは、矯正教育という限られた領域では、非行少年の立ち直りへの視点がどうしても限定されてしまうためである。
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次年度の研究費の使用計画 |
カリフォルニア州等への海外訪問調査の旅費として、まず交通費31万円、宿泊費9万1千円の合計40万1千円を計上している。主な調査先としては、矯正施設、少年裁判所、教育委員会、オルタナティブスクール、学校等を候補に検討している。また、国内調査及び研究成果発表のための旅費として、交通費4万、宿泊費3万9千円の合計7万9千円を計上した。国内調査としては、長期処遇、短期処遇の初等中等少年院、特別少年院を候補に検討している。研究成果発表としては、国内の学会、主に司法福祉分野、学校教育分野の学会での成果発表を予定している。加えて、文献等の複写費として1万円を、出張等で用いるモバイル通信費として1万円を計上している。上記の費用を合計し総額50万円を計上している。
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