本研究では、米国カリフォルニア州の怠学、薬物、非行、早期妊娠等、様々なリスクを抱えた児童生徒を対象としたオルタナティブ教育制度に焦点を当て、インタビュー調査や現地視察等を通して、その内実を明らかにすることを試みた。 本研究で明らかになったことは、カリフォルニア州のオルタナティブ教育制度は、州内の郡と学区の2つのレベルにおいて、それぞれ児童生徒のリスクに応じた仕組みが二層構造として構築されていることである。より具体的に述べれば、児童生徒のリスクの程度が軽い場合には、学区レベルのオルタナティブが活用され、学区のオルタナティブでの指導・支援のみでは不十分である場合に郡レベルのシステムが活用される。 学区レベルでは、「学内停学」(In-School Suspension)、「コミュニティ・デイ・スクール」(Community Day School)等が、また、郡レベルでは「コミュニティスクール」(Community School)、「コートスクール」(Court School)等のプログラムが考案されている。 とりわけ、特徴的であるのは、コミュニティスクールやコートスクール等、リスクを抱えた児童生徒を対象としたオルタナティブ教育は、郡保護観察局や郡ヒューマンサービス局、薬物関係のCBO(Community based Organization)等、地域の多様な関係機関を支援活動に制度的に取り入れていることである。つまり、オルタナティブ教育が「多機関的資源」として構築され、子どものニーズにより適合するよう企図されている。 だが、本研究期間は2年間であったため、インタビュー調査についてはカリフォルニア州ソノマ郡のみの各種関係機関にとどまった。今後、より制度の実質的機能を明らかにする上では、研究対象地域を拡大し、その他のオルタナティブ教育機関をも射程に入れた、包括的な研究を推進する必要がある。
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