研究課題/領域番号 |
23730550
|
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
寺田 貴美代 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (70352680)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ドメスティック・バイオレンス / 被害者支援 / 異文化を背景にもつ子ども |
研究概要 |
ドメスティック・バイオレンス(以下、DVと表記)の被害者とは一般的に配偶者間暴力の被害者をさす。しかし、平成17年に改正された児童虐待防止法にてDVの目撃が児童虐待にあたることが明記されたように、DVのある家庭で育つ子どもは心身に多大な影響を受けやすく、DVと児童虐待には密接な関係があることが明らかとなっている。そして近年、日本人男性と外国人女性との国際結婚が増加し、その子どもたちのDV被害が急増している。日本人父と外国人母との狭間で、子どもたちは長期に渡って特有の困難を抱える傾向があり、DVによる影響が深刻化している。このような中、DV防止法にて被害者の国籍を問わず人権を尊重するよう示されているように、直接的な被害者である外国人女性については問題への理解が広がり、状況が改善しつつある。一方で、同じくDVの影響を被りながらも、外国人母とともにDV被害を受けた子どもたちに対しては十分な支援体制が確立されているとは言い難く、学校や支援団体などの各機関や関係者の個別的努力に委ねられているのが現状である。 そこで、(1)外国人母と共にDV被害を受けた子どもなど、異文化を背景に持つ子どものDV被害に関する実態を把握する。そして、問題の背景に対する分析を行うことにより、子どもたちの被害の実態を把握する。(2)現状の支援体制の問題点を分析し、多様な文化的背景や家庭環境への配慮、および社会への働きかけを伴う長期的かつ包括的な支援プログラムを構築する、という2点を目的として研究を進めている。 特に平成23年度は、(1)異文化を背景に持つ子どものDV被害とその支援に関する先行研究の把握と方法論の検討、および(2)母子生活支援施設とNPO団体にて母子支援に関する調査を中心に研究を遂行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)異文化を背景に持つ子どものDV被害とその支援に関する先行研究の把握、方法論の検討 DV対策に関するソーシャルワークおよび外国人支援に関するソーシャルワークは、イギリスやアメリカ、カナダを中心に理論的発展を遂げた経緯があり、日本ではDVに関する支援が展開されながらも、それが必ずしもソーシャルワークとしては認識されておらず、外国人に関する国内のソーシャルワーク研究も限られている。そのため、歴史や文化・社会的背景の異なる国々で発展した理論である点を考慮しつつ、海外の理論を本研究に援用する必要があることから、先行研究のレビューを通して外国人母とともにDV被害を受けた子どもの問題を整理した。(2)母子生活支援施設およびNPO団体にて母子支援に関する調査を実施 DV被害を受けた外国人母子を支援している母子生活支援施設にてこれまで実施した聞き取り調査、および国内のシェルターなどのNPOで実施した聞き取り調査をもとに子どもたちの被害と母子関係への影響を中心に検討し、被害の実態について分析した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)平成23年度に実施した母子生活支援施設の調査を継続して行い、その結果を分析 平成23年度に引き続き、母子生活支援施設での聞き取り調査結果を踏まえて、子どもと母子関係を中心に継続調査を実施し、データを分析する。(2)母子生活支援施設およびNPO団体にて母子支援に関する調査を実施 DV被害を受けた外国人母子を支援しているNPOで実施した聞き取り調査をもとに子どもたちの被害と母子関係への影響を中心に検討し、被害の実態について分析する。(3)異文化を背景にもつ子どものDV被害とその支援に関する理論的検討 平成23年度に行った先行研究の把握や方法論の検討を引き続き実施し、理論的検討をさらに進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)設備備品費30万円、内訳:パソコン・DV被害者支援に関する書籍・ソーシャルワーク関連書籍等(2)旅費39万円、内訳:調査(千葉県)交通費×1往復+宿泊費7泊、調査(東京都)交通費×8往復+宿泊費2泊×2回、研究成果発表(学会発表@宮城)交通費+宿泊費2泊×1回等(3)人件費・謝金4万円、内訳:調査(団体)謝礼金×5団体+調査(個人)謝礼金×10人(4)その他7万円、内訳:報告書印刷代、文房具代、複写費以上、合計80万円
|