研究課題/領域番号 |
23730550
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
寺田 貴美代 新潟医療福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (70352680)
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キーワード | 被害者支援 / 異文化を背景に持つ子ども |
研究概要 |
DV防止法において被害者の国籍を問わない人権の尊が謳われているように、直接的なDV被害者である外国人女性(母親)については社会問題としての認識が広がり、状況も改善されつつある。しかしながら、同じくDVの影響を被りながら、外国人母とともにDV被害を受けた子どもたちに対しては十分な支援体制が確立されているとは言い難く、学校や支援団体などの各機関や関係者の個別的努力に委ねられているのが現状である。 そこで、外国人女性のDV被害の特徴と有効な支援のあり方を検討し、DV被害は外国人女性のみならず、その子どもにまで波及していることを把握した。また、現実に提供される社会福祉支援は多様であり、その前提となる価値判断も、時代や社会、文化により変化を遂げることを指摘した。そして、問題の背景を理論的に考察するため、社会福祉を成立した結果から捉えるのではなく、成立する過程に着目し、利用主体と提供主体間でとり結ばれる関係から分析することにより、社会福祉の規定要因を考察した。 さらに、これまでの研究成果を発展させ、利用主体と提供主体間で構築される関係の特徴から理念上の類別を行い、社会的価値判断によって社会福祉が規定されるだけではなく、異質な価値観によってもその判断が問い直され続けることを指摘した。そのため社会福祉における権利擁護とは、単に利用主体の権利を擁護するだけではなく、社会福祉が時代や社会に合わせて変化する契機となることを明示化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)異文化を背景に持つ子どものDV被害とその支援に関する先行研究の把握・方法論の検討 DV対策に関するソーシャルワーク理論は、イギリスやアメリカ等を中心に発展した経緯があり、日本ではDV対策が実施されながらも、それが必ずしもソーシャルワークとして認識されておらず、外国人に関するソーシャルワーク研究も限られている。そのため、歴史や文化・社会的背景の異なる国々で発展した理論である点を考慮しつつ、海外の理論を本研究に援用する必要があることから、先行研究を渉猟し、異文化を背景に持つ子どもたちのDV被害に関する問題を検討した。 (2)母子生活支援施設等での支援に関する聞き取り調査 DV被害を受けた外国人母子を支援している母子生活支援施設においてこれまで実施した聞き取り調査の結果をもとに、子どもたちの被害と母子関係への影響を中心に検討し、被害の実態について分析した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)母子生活支援施設の調査を継続して行い、その結果を分析する これまで実施してきた母子生活支援施設での聞き取り調査を引き続き行い、その結果を踏まえてデータを分析し、被害の実態について明らかにするとともに、必要な支援のあり方について考察する。 (2)異文化を背景に持つ子どものDV被害とその支援に関する理論的検討 先行研究の把握や方法論の検討を引き続き実施、理論的検討をさらに進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)設備備品費 30万円 内訳:データ分析用ノート型パソコン、DV被害者支援およびソーシャルワーク関連書籍等 (2)旅費 25万円 内訳:調査(千葉県)交通費×1往復+宿泊費3泊、調査(東京都)×6往復 (3)人件費・謝金 2万円 内訳:調査謝礼金×2団体 (4)その他 5万円 内訳:報告書印刷代、文房具代、複写費等
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