本研究は、(1)外国人母とともにDV被害を受けた子どもなど、異文化を背景に持つ子どものDV被害に関する実態を把握し、問題の背景について分析すること、(2)現状の支援体制の問題点を整理し、多様な文化的背景や家庭環境への配慮、および社会への働きかけを伴う長期的かつ包括的な支援プログラムを構築すること、という2点を目的としている。 これまでの研究において、外国人女性が受けるDV被害には法的地位を利用した暴力や文化的暴力など、日本人の被害とは異なる特徴があり、外国人被害者の実情へ配慮した支援の提供が不可欠であることを明らかにした。さらに、その子どもたちの被害は多岐に渡り、深刻化や長期化が進展していることを把握した。そこで平成26年度は、このようなDV被害を受けた外国人女性とその子どもに特有な問題へ対応するため、多文化ソーシャルワークを活用し、多様な文化的・社会的背景への配慮を伴う支援提供のあり方について検討した。 その結果、DV被害を受けた外国人女性やその子どもたちへの支援においては、生起した問題への局面的な対応のみならず、時間的経過の中で個別の状況を把握し、多様な文化的背景に肯定的な価値を見出せるようアイデンティティの確立を支え、生活再建へとつなげる長期的な視点が不可欠であることが明らかとなった。その意味において、多文化ソーシャルワークの活用によって多様な文化的・社会的背景への配慮を伴う支援を提供するとともに、関係機関が連携して多面的な支援体制を構築することが、急務の課題であると指摘した。
|