本研究は、外国人母とともにドメスティック・バイオレンス(DV)による被害を受けた子どもなど、異文化を背景に持つ子どものDV被害の実態について考察したものである。DVからの直接的被害としては、DV加害者と被害者の両方から虐待を受ける危険性が高く、また、家庭環境から多大な影響を被ることが把握された。そして、直接的被害から生じる間接的被害としては、学業不振や、価値観およびアイデンティティのゆらぎ、母子関係の不安定化などが長期に渡って存続することが明らかとなった。そのため、子ども自身が多様な文化的背景に価値を見出せるようアイデンティティ確立を支える長期的支援体制の確立が不可欠であることを指摘した。
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