研究課題/領域番号 |
23730552
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研究機関 | 健康科学大学 |
研究代表者 |
川村 岳人 健康科学大学, 健康科学部, 講師 (30460405)
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キーワード | 地域包括ケアシステム |
研究概要 |
今年度は,地域包括ケアシステムの機能要件のうち,≪発見≫に着目するため,地域社会の中で孤立をしがちな生活困窮者に焦点を当て,参与観察およびインタビュー調査を実施した。その結果,生活に困窮する世帯が身近な相談相手を持たず,地域社会から孤立した状況に置かれている状況が明らかとなった。対象者の中には,地域社会の中で何らかの人間関係を形成している者もあったが,近隣の住民には相談するどころか,むしろ困窮していることや生活保護を受給していることを知られたくないという傾向がみられた。さらには,匿名性が低い地域を離れて都市部へ移住する決断をした事例もあり,ソーシャル・キャピタルが豊かな地域が一部の地域住民に孤立や排除をもたらし得ることが確認された。このことは,地域社会における人間関係を強化すれば,すべての課題を把握したり,孤立を予防できたりするとは限らないことを意味するものである。 次に,生活困窮者の支援についてであるが,地域社会の中に「居場所」をつくり出すことが奏功している場合が多い。特に支援団体のスタッフや同じ境遇にある人たちと共有する空間では,自分が生活に困窮していることを開示しても恥ずかしい思いをしたり,疎外されたりすることがない。社会的孤立に陥っている人びとの「居場所」を地域社会の中につくり出すためには,行政や民間支援団体などさまざまなアクターが協働し,耕作放棄地など地域の社会資源を活用することが有効であるという示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの研究成果より,次年度の研究を推進する際に必要となるフィールドの選定や分析枠組みの設定,調査デザインおよび仮説の生成を概ね終えている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
社会的孤立の状態にある人びとを対象に設定し,地域包括ケアシステムの構築を考察する。貧困と社会的孤立の相関など,どのような特性の人びとが社会的孤立に陥りやすいかということに加え,各地域の地域特性を視野に入れ,地域社会が社会的孤立をもたらす側面についても焦点を当て,考察を進めたい。 また,社会的孤立に陥った人びとの包摂を追求する視座から,地域社会の中に「居場所」をつくるための方策についても考察の対象とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
関連図書の購入や文献複写の取り寄せ,社会調査を実施するための旅費,逐語録の作成やデータ入力に関する人件費,調査協力者への謝礼等に要する支出を予定している。
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