研究課題/領域番号 |
23730555
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
汲田 千賀子 日本福祉大学, その他部局等, 非常勤講師 (80387844)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 認知症ケア / デンマーク / 専門職 / 養成教育 / 現任研修 |
研究概要 |
今年度は、以下のような現地調査を行った。1.デンマーク国内にて認知症専門ユニットのリーダー6名にインタビュー調査を実施し、認知症ケアを専門的に行っていくために組織運営、スタッフ教育について実施していることについて意見を集約した。2.デンマークにおける介護士(社会保健介護士、社会保健介助士)の養成とカリキュラムに関して、オーデンセの介護士養成学校で所長にインタビュー調査を依頼し、実施した。3.日本のグループホーム(愛知県全域)を対象に、郵送法によるアンケート調査を実施し、職員体制、職員の資格、実施している研修について明らかにした。 23年度は、これらのことから、次のことが示唆された。(1)デンマークの介護現場でのリーダーとなっている人材は、介護や看護の資格を基礎資格としながら、教育学や経営学を学んでいること。このことは、日本のグループホームでは管理者研修を修了しているという1点に条件が集約されているので、基礎資格を問われていないことが、現場のケアを創ることに影響している可能性がある。(2)デンマークの介護士の養成では、全試験口頭試問によって行われ、ケアの方法やその理由を述べられる能力が求められている。根拠に基づいたケアは、専門職としての仕事のあり方を問われている。日本では、知識・技術があることがよいとされがちであるが、介護にエビデンスが求められる今日において、この能力が今後日本にとってもますます求められてくる。(3)日本のでの調査では、設置主体の大幅な規制緩和により、さまざまな事業者がいる中で、愛知県を対象にした調査では、設置主体別の明らかな差はなく、平均介護度にも差がなかった。このことから、設置主体によってケアを比較できるものではなく、中で展開される職員の行うケアの内容と法人が考えるケアの在り方によって、行われることに差が生じてきているのだろうと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度に予定していた調査の大半は終了した。また、今後に必要と思われるネットワークや人脈も23年度のデンマークでの調査の際につないできたため、おおむね順調に進展していると言える。また、新たに認知症国家戦略の下で始まったプロジェクトについてもその内容について知ることができた。デンマークは在宅で過ごせる期間をいかに長くすることができるかということに力を入れており、重度認知症高齢者のデイセンターに力を入れている。このことからも、在宅生活をしている認知症高齢者の状況を的確にアセスメントしながらサービスにつなげてげていく専門職としての認知症コンサルタントの重要性を感じた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、1.日本の認知症グループホームにおける介護職員のフォーカスグループインタビューを行い、介護職員の技術に裏づけされる要因について明らかにする。2.同様の調査をデンマークの認知症ユニットで行う。文化や国民性の相違が、ケアをするうえで何を大切にしているのかということに左右されているという仮説をもとに日本とデンマークとの比較研究を行う。また、日本の認知症グループホームの管理者にインタビュー調査を実施する。22年度に行ったアンケート調査において、自施設で研修(職員のスキルアップ)を行っているという施設とそうでない双方の管理者にグループホームケアと職員養成についての考えを語り、グラウンデッドセオリーで分析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、7月にデンマークでの調査を予定している。認知症ケアユニットでのフォーカスグループインタビュー(5名を予定)を行い、調査協力者に謝金を支払う。また、調査に際しては、デンマークでの通訳や現地調査コーディネートを依頼し、より正確な通訳で認知症ケア現場を支える専門職の声を通訳してもらう。また、デンマーク語の資料の翻訳を、帰国後依頼する。日本でも同様に、フォーカスグループインタビュー(5名)を行い、調査協力者に謝金を支払う。また、グループホーム管理者に対して、個別にインタビュー調査を行う予定であり、調査協力者には謝金を支払う。これらで得た新しい知見を、学会で報告し、学術論文を作成し、投稿する。
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