本研究は、デンマークの認知症コンサルタントの機能に着目し、その養成プログラムと日本への援用の可能性について検討するために、以下のことをについて取り組んできた。1.認知症ケアに関する対人援助的なアプローチに関する研究とその成果の国際動向について、整理分析を行った。国際的には、ブラッドフォード大学のトム・キッド・ウッド氏が提唱した、「パーソン・センタード・ケア」が主流となっており、デンマークにおいても、同様であった。2.認知症ケアに関する初期教育のカリキュラムに関する日・丁の比較検討と課題析出を行った。座学と実習で行われる教育は、日・丁ともに同じであるが、入学前の準備教育が設けられており職業としてのケアに関しての適正を自分で見極める1年が用意されている点が特徴である。認知症に関する勉強は高齢者ケアの1つとして学ぶ程度であった。3.そのため、卒後教育(追加教育)がケア現場に出た後に手厚く設けられている実態がある。丁では、認知症ケアに携わるすべての職員が認知症ケアの研修を修了していることが義務付けられている。さらに、実践現場の中でケア困難な方がいる場合には、認知症コンサルタントが当該グループホームに出向き、スタッフのスーパービジョンをしながら一定の方向性を導き出すといったことも行っている。この点が、今後の日本の認知症ケアを担う人材養成と質の向上に極めて重要な点であることが示唆された。 日本における援用という視点では、すでに様々行われている研修を修了した者のうち「認知症介護指導者」の研修を修了している者の活用が考えられる。さらに、認知症ケアの質の向上や地域全体のボトムアップを考えた場合には、認知症コンサルタントの役割を担う人材は自治体に所属しているということがのぞましいと考えられた。
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