研究課題/領域番号 |
23730557
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
永田 祐 同志社大学, 社会学部, 准教授 (90339599)
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キーワード | パーソナライゼーション / 個人予算 / コミュニティケア / ボランタリーセクター |
研究概要 |
本研究の目的は、イギリスの社会福祉サービスで導入された個人予算を研究対象とし、次の二つのリサーチクエスチョンについて明らかにすることである。まず、第1に「個人予算を活用して高齢者が自らのサポートプランを作成する際の支援体制はどのようなものであるか、特に地方自治体のソーシャルワーカーとボランタリーセクターの役割はどのように変化しているか」、そして第2に「個人予算の活用はそれを活用する高齢者自身にどのような変化を及ぼしているのか。特にサポートプラン作成への参加はどのよう認識され、生活にどのような効果を及ぼしているのか」である。 今年度は、両リサーチクエスチョンについてインタビュー調査を行う予定であったが、若干研究計画を変更し、前者のインタビュー調査のみを行った。調査は、2012年7月にManchester、Barnsley,Oldhamの3つの市の自治体の関係者と同地域で活動するボランタリー組織に対して行った。本年度の調査の結果から示唆されているのは以下のような点である。 第1に、ソーシャルワーカーたちは先行研究などで示されているほどには個人予算の導入を否定的にとえていなかった。制度によって実現される「選択とコントロール」という理念に多くのソーシャルワーカーは賛同していることがわかった。一方、第2にイギリスにおける自治体の財政状況は非常に逼迫しており、ソーシャルワーカーが削減されるなど制度の理念を実際に実現することが難しい環境がある。こうした制度の理念や考え方とは別の要因が、制度に対するソーシャルワーカーの認識に影響していることもわかった。第3に、ボランタリー組織はアドボカシーの分野などで新しい制度に大きな役割があることを認識しているものの、自治体との契約から個人との契約になることでの経営の不安定化を危惧していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の進捗がやや遅れている理由は、平成25年度に在外研究員としてイギリス(現地)で研究できることになったため、一部の調査の実施を平成25年に繰り下げたためである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は以下のとおりである。 まず、今年度に実施できなった調査とあわせて予定している調査を行う。今年度実施できなった調査の費用を繰り越したため、これをこの調査のために支出する。 あわせて研究計画に記載のとおり、ソーシャルワーカーおよびボランタリー組織の役割の変化、高齢者本人の認識の変化についてまとめ、研究の総括を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の主な支出は以下の二項目であり、これまでどおり適切に使用する。 ①インタビューおよびそのアレンジのための謝礼、交通費といったインタビュー実施にかかる費用、およびそのテープ起こし。 ②研究遂行および統括に必要な文献の購入 ③その他の物品、消耗品など
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