研究目的および研究計画に則し、最終年度においても、継続した文献調査を実施した。経過年度の調査結果も含めて、知的障害のある人の自己決定支援においては、「共同決定」の考え方、そして、「複数の他者による推定」といった支援等が必要である点が確認された。 また、知的障害のある人の自己決定支援における親の適切な関わりを検討するために、知的障害のある人の親5名に対して、個別インタビュー調査を実施した。本調査では、親が、知的障害のある子どもの好きなこと、希望、夢、そして、能力等を広く、そして深く理解していることが明らかとなった。これらには、その支援者ですら認識していない点も多く含まれていた。一方で、“知っている”と過信することからくる知的障害のある人への“制約”についても、本調査において語られた。 加えて、知的障害のある人の自己決定支援について、先駆的実践に関する情報を得るため、米国においてヒアリング調査等を実施した。まず、米国南部州において広範囲に知的障害のある人の地域生活支援を行っているEvergreen Life Servicesにおいて、支援スタッフ、そして、知的障害のある利用者等に対して、ヒアリング調査等を行った。また、American Association on Intelllectual and Developmental Disability(アメリカ知的・発達障害学会)およびDC CIL(DC自立生活センター)等を訪れ、米国における知的障害のある人の地域生活および自己決定支援の状況についてヒアリングを行った。その結果、知的障害のある人の自己決定支援としては、本人の希望や好み等といったストレングスに焦点を当てる本人中心計画(PCP: Person-Centered Planning)等を採用している支援現場もあり、それらが実践的観点から有効であることが示唆された。
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