研究課題/領域番号 |
23730560
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
石田 賀奈子 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 講師 (50551850)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 社会的養護 / 里親 / 子どもの最善の利益 |
研究概要 |
研究初年度にあたる今年度は、(1)里親・フォスターケアに関連する文献・資料等の収集および整理(2)文献研究・資料研究の結果についての社会的養護に関する研究者、および実務家等へのインタビュー調査を進めてきた。(1)については、実践に関連する政策文書や児童相談に関する調査報告等を中心に、民間の関連団体の提言等を含めて幅広く情報収集し、(1)子どもの最善の利益を考慮した里親認定アセスメントの構成要素、(2)多職種連携に基づく里親支援プログラムのあり方の2点について考察を進めてきた。里親認定については、ミーンズテストや養育環境のハード面に関する情報は聴取されるものの、養育適性のアセスメントを行う必要性は感じながらも、客観的な指標がないままに取り組まれているのが実情である。里子養育に対する思いについてどのような情報収集を行い、どのように分析するかは担当児童福祉司の手にゆだねられている現状に対し、里親委託経験豊富な児童福祉司が考える養育適性についてインタビュー調査を通じて明らかにする必要が示唆された。そのため、(2)インタビュー調査については、(1)里親適性認定アセスメントにおいて重要と思われる視点とその課題、(2)児童相談所と児童養護施設の連携に基づく「親育ち支援としての里親研修プログラム」のあり方、の2点についてインタビューを進めている。しかし、先駆的な取り組みについての事例収集に向け、さらにサンプルを追加しての情報収集の必要がある。児童福祉施設最低基準の改正内容から、児童養護施設等におけるソーシャルワーク実践の重要性が認識されていることがうかがえる。児童相談所、児童福祉施設、里親当事者の連携に基づく社会的養護の提供を実現するための方策を提言することの必要性はますます高まっており、研究成果の現場への還元は、子どもの最善の利益の実現に貢献しうるものであると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度の計画((1)里親・フォスターケアに関連する文献・資料等の収集および整理(2)文献研究・資料研究の結果についての社会的養護に関する研究者、および実務家等へのインタビュー調査)において、当初年度内に完了予定であった社会的養護に関する研究者、および実務家等へのインタビュー調査については、具体的な実践事例の収集に向け今年度も引き続き取り組む予定である。この点についてはインタビュー協力者を早期に選定し、進捗に遅れのないよう調査に取り組んでいく予定である。交付申請書にも示した通り、子どもの最善の利益に資する里親委託の実現に向けては、児童相談所の里親担当者の判断に一層の専門性と客観性が求められている。加えて、委託後の養育里親のスキルの向上のためにも、一貫性のある里親研修プログラムの実施や、児童養護施設や児童家庭支援センター、あるいは地域のその他の社会的資源による継続的なサポートが必要不可欠であり、その体制構築も重要な課題である。そこで児童家庭支援センター博愛社(大阪市)との協働の元、大阪市において家庭支援専門相談員(ファミリーソーシャルワーカー:以下FSW)連絡会を立ち上げた。平成23年6月より、児童福祉施設最低基準が改定され、児童養護施設等でのFSWの配置が最低基準に明記された。本研究においても地域における里親支援体制の構築に向けて、重要な役割を担う専門職として位置付けている専門職であり、連携は不可欠である。次年度以降の研究の遂行において専門的知識の提供を得るとともに、一番身近な実践現場として研究成果をフィードバックし、社会的養護を必要とする子どもたちの福祉に貢献していく足掛かりとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度については、(1)社会的養護、特に里親委託および里親支援に関する研究者、および実務家等へのインタビュー調査(2)児童相談司の里親認定アセスメント及び里親委託の現状を把握するための枠組みの作成、(3)(2)で作成した枠組みをもとに児童相談所の児童福祉司を対象としたアンケート調査の実施と分析、の3点を柱に研究を進めていく。(1)については、(1)子どもの最善の利益を考慮した里親認定アセスメントの構成要素、(2)多職種連携に基づく里親支援プログラムのあり方の2点を明らかにすることを目的とし、先駆的な里親開拓実践、里親支援実践に取り組まれていると考えられる自治体や児童福祉施設等についてさらなるデータ収集に取り組んでいく予定である。(2)については、(1)の分析結果に基づき、児童相談所の実践活動に即したものになるように児童相談所関係者、学識経験者からの支援を受け、検討を重ねる。(3)については、調査票を作成するにあたっては、研究代表者が前年度までに進めてきた調査結果の精緻な分析を行うとともに、協力の了解が得られている児童相談所の児童福祉司への予備調査を行い調査票の精度を上げる。本調査の対象は、全国の児童相談所の里親担当児童福祉司とし、児童相談所担当者の視点からの里親支援の現状と課題を数量的に明らかにする。なお、分析にあたっては社会調査の専門研究者からの協力を得ることによって、分析にバイアスがかからないように配慮する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究予算は、調査の枠組み作りのための費用(資料収集・複写費・専門的知識の提供への謝金・調査研究旅費)、アンケート調査のための費用(調査票印刷費・郵送費・資料整理費)が中心となる。まず、子どもの最善に資するためのより精緻化された枠組みの作成に向けて、今年度引き続き実務家および学識経験者、里親当事者へのインタビュー調査を行う。インタビュー内容および分析結果の客観性を高めるためにも学識経験者からの意見聴取を行う。今年度研究費からインタビュー協力者や学識経験者への専門的知識の提供に対する謝金を支出する予定である。次に、アンケート調査の作成、および分析にあたっては、調査票印刷費及び郵送費、データ整理費用が中心となる。質問紙は予備調査を行ったうえで全国の児童相談所に配布する。なお、平成23年12月20日現在の全国の児童相談所数は206か所である。これらすべてへの郵送を予定している。さらに、分析結果については、バイアスがかからないよう社会調査を専門とする研究者からの協力を得る必要があり、専門的知識の提供に対する謝金を支払う予定である。
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