研究課題/領域番号 |
23730560
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
石田 賀奈子 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 講師 (50551850)
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キーワード | 社会的養護 / 里親 / 子どもの最善の利益 |
研究概要 |
今年度については、(1)社会的養護、特に里親委託および里親支援に関する研究者および実務家等へのインタビュー調査、(2)児童福祉司の里親認定アセスメント及び里親委託の現状を把握するための枠組みの作成、(3)(2)で作成した枠組みをもとに児童相談所の児童福祉司を対象としたアンケート調査の実施と分析の三点を柱に据えた。 (1)については、①里親適性認定アセスメントにおいて重要と思われる視点とその課題、②児童相談所と児童養護施設の連携に基づく「親育ち支援としての里親研修プログラム」の在り方について研究を進めてきた。具体的には、児童福祉施設の家庭支援専門相談員連絡会での情報交流を通したヒアリングや、今年度より新しく配置が可能となった里親支援専門相談員へのヒアリング、里親委託率30%を達成した福岡市でのヒアリングを通してこれらの検討を行った。里親適性については、養育スキルの向上に支援が必要と思われる里親希望者に対して、継続的な研修メニューの提供と多機関・多職種による継続的なかかわりが不可欠であることが確認されたが、家庭支援専門相談員や里親支援専門相談員の語りからは里親制度の啓発・普及、里親家庭での養育実践の支援、いずれにおいても多機関の有機的連携が熟していないことが課題として挙げられた。 (2)については、児童相談所里親担当ケースワーカーの協力のもと、(1)で得られた知見をもとに枠組みを作成し、質問紙作成に取り組んでいる途中である。平成24年4月より児童養護施設等に配置が可能となった里親支援専門相談員との連携の状況についても現状を把握する必要があると考え、里親支援専門相談員の実践内容についてもアンケート調査の同時実施を検討している。そのため、調査実施時期を遅らせている状況であるが、より幅広く現状を把握するため、質問項目の精査に時間をかけているという事情のためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の計画((1)インタビュー調査、(2)児童福祉司の里親認定アセスメント及び里親委託の現状を把握するための枠組みの作成、(3)(2)で作成した枠組みに基づくアンケート調査の実施と分析)の達成状況は以下の通りである。 (1)については、①里親適性認定アセスメントにおいて重要と思われる視点とその課題、②児童相談所と児童養護施設の連携に基づく「親育ち支援としての里親研修プログラム」の在り方について、児童養護施設の家庭支援専門相談員や里親支援専門相談員へのヒアリング、先駆的事例(福岡市)の事例検討を行った。里親適性については、里子の委託にあたっては支援が必要と思われる里親希望者も貴重な資源とし、継続的な研修メニューの提供と多機関・多職種による継続的なかかわりが不可欠であることが確認された。また、その内容についても、教育的な支援とともに、子どもの最善の利益をともに支えるパートナーとしてとらえ、多機関・多職種連携の一資源として組み込むことが重要であると示唆された。一方、家庭支援専門相談員や里親支援専門相談員の語りからは里親制度の啓発・普及、里親家庭での養育実践の支援における多機関の有機的連携が未成熟であることが課題とされ、そのためのモデルの提示が必要であることが明らかとなり、本研究を通して提示していく必要が確認された。 (2)については、児童相談所里親担当ケースワーカーの協力のもと、(1)で得られた知見をもとに枠組みを作成し、質問紙作成に取り組んでいる途中である。平成24年4月より児童養護施設等に配置が可能となった里親支援専門相談員との連携の状況についても現状を把握する必要があると考え、その実践内容についてもアンケート調査の同時実施を検討している。そのため、里親支援専門相談員への意見聴取を行いつつ質問紙の作成を行っており、アンケートの実施及び分析は次年度に実施するとの判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度にあたる次年度については、まず今年度課題であった児童相談所の里親担当児童福祉司を対象としたアンケート調査及び児童養護施設の里親支援専門相談員を対象としたアンケート調査の実施及び分析を行う。分析にあたっては、社会調査の専門研究者からの協力を得ることによって結果にバイアスがかからないよう留意する。 さらに、次年度の課題として得られたデータをもとに①里親適性認定アセスメントにおいて重要と思われる視点とその課題、②児童相談所と児童養護施設の連携に基づく「親育ち支援としての里親研修プログラム」の在り方について必要な構成要素を明らかにするとともに、≪実践現場に応用可能な具体的なプログラム≫の完成を目指す。また、本研究で得られた知見について実践現場に還元するため、論文の執筆および投稿や講演会等での報告にも取り組んでいく。 具体的なプログラムの構築にあたっては、社会的養護、特に里親制度に関する専門的な知識を有する学識経験者へのヒアリング・児童相談所の児童福祉司や児童養護施設の里親支援専門相談員へのヒアリングを実施する。 里親認定の過程においては、里親希望者に実際委託するにあたって、継続的な研修メニューの提供と多機関・多職種による継続的なかかわりが不可欠であること、また教育的な支援とともに、子どもの最善の利益をともに支えるパートナーとしてとらえ、多機関・多職種連携の一資源として里親を子どもを支えるネットワークに組み込むことが重要であることがこれまでの調査を通して示唆されている。プログラムの作成に当たっては、こうした実践に取り組むための手続きが明確に示されたものをめざして精緻化を図るものとする。得られた成果は、社会的養護、特に里親支援に携わる各領域での活用に供するため、報告書としてまとめ、配布する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究予算は、①アンケート調査のための費用(印刷費、郵送費、資料整理費等)、②インタビュー調査のための費用(専門的知識の提供への謝金、調査旅費等)、③報告書作成および配布のための費用(印刷製本費、郵送費等)の3項目に充てる費用が中心となる。①アンケート調査については、全国の児童相談所(平成24年11月1日現在207か所)および里親支援専門相談員を配置する児童福祉施設への配布を予定している。また、分析にあたっては、社会調査の専門研究者からの協力を得て結果のバイアスを防ぐことが必要であり、専門的知識の提供に対する謝金を支払う予定である。 ②のインタビュー調査については、現状把握を目的としたこれまでの調査とは違い、これまでの研究から導き出したプログラムの精緻化を目的として実施する。調査においては里親支援について専門的知識を有する学識経験者・里親担当児童福祉司・里親支援専門相談員等を対象とした意見聴取を予定しており、調査協力者の専門的知識の提供に対する謝金を支払う予定である。 さらに、得られた成果については、社会的養護、特に里親支援に携わる各領域での活用に供するため、報告書としてまとめ、配布する。そのため次年度予算において成果報告書の印刷製本費および発送にかかる郵送費を支出する。
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