小児の電動車いす導入は厚生労働省より小学校高学年以上が望ましいという指針が示されており、低年齢児への導入は個別に対応されている。また、学術的にも低年齢児の電動車いすに関する基礎データは少なく、本当に必要な小児への電動車いす支給の妨げにもなっている。 そこで、本研究では電動車いすの基礎データを収集し、低年齢からの移動支援の可能性を探ることとした。初年次は佐賀県における電動車いすの交付実態調査をまとめ発表し、少ないながらも未就学児ならびに小学校低学年児童に対して電動車いすが交付されておる現状が明らかになった。次に未就学児の健常児を対象に、電動車いす操作に必要な能力について検討を行った。その結果、4歳程度の認知・社会性の発達が認められる児童に関しては、電動車いすを屋内で安全に操作出来る可能性があることが示された。 また最終年度には実際電動車いす導入を検討している未就学児に対して各個人に調整された電動車いすを用いて導入経過を報告した。3症例とも5カ月間の練習期間後、電動車いす操作性の向上が認められ、遠城寺式発達検査において、発達月齢が対人関係・言語理解項目で10カ月から12カ月と1歳前後の発達段階であったが、電動車いす操作性は向上した。 研究期間を通して、未就学児においても電動車いすを安全に操作出来る可能性が示唆され、また障害を持つ低年齢児童についても練習期間を設けることでより早期から電動車いすを導入出来る可能性を示すことが出来た。
|