発達障害者支援法施行後、発達障害者支援体制のキーステーションとして都道府県・指定都市に発達障害者支援センターが設置されることとなった。支援体制の構築が全国各地において急ピッチで展開される中、発達障害者支援センターは一次支援である直接支援(相談支援、発達支援、就労支援を含む。)から、より専門性の高い支援へシフトするよう位置づけられてきたがその実態は不明である。本研究では、発達障害者支援センターにおける支援状況を明らかにするため、全国発達障害者支援センター実績報告の統計学的分析および実地調査を行った。また、発達障害者への支援に影響しうる因子について文献調査を実施し統計解析に用いた。発達障害者支援センターにおける支援状況として、全国的な傾向としては直接支援件数の増加、成人相談者割合の増加、就労支援割合の増加などがみられた。支援実数の経年変化に関する都道府県別検討の結果、直接支援実数が顕著に増加した県を認める一方で、直接支援から間接支援に支援の比重をシフトする県があるなど地域差が明らかになった。県内市町村の取り組み状況との比較によって、市町村よりも直接支援件数の多い発達障害者支援センターが27県(57%;平成20年度)と半数を超えることが分かった。また、文献調査で得た支援に影響しうる因子について、政府統計から都道府県別データを抽出し、相談件数と相関分析を行ったところ、世帯構造との有意相関が得られた。実地調査では調査対象施設の立地条件、資源背景、強み・弱み、独自性など特性について視察および聞き取り調査し、支援モデルとなりうる取り組みと今後の課題についてまとめた。発達障害者支援の今後の課題は、医療資源の少ない中での診断前支援や成人期支援であると考えられた。
|