研究課題/領域番号 |
23730570
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研究機関 | 独立行政法人労働安全衛生総合研究所 |
研究代表者 |
久保 智英 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 作業条件適応研究グループ, 研究員 (80464569)
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キーワード | 介護労働 / メンタルヘルス / 疲労 / 睡眠 / 情動負担 / 交代勤務 / 夜勤 / 感情労働 |
研究概要 |
我が国の高齢化は、今後、ますます加速することが予想されている。しかし、核家族化により、どの家庭においても、高齢となった親の介護を1つの家庭で担うことは難しい状況になってきている。そのような現状を受けて介護サービス利用への需要は、今以上に高まっていくことが推測される。しかし、そのサービスの担い手となる介護労働者の離職率は非常に高い。したがって、彼らが仕事に満足して長く働き続けられるように労働環境の更なる改善が求められている。 これまで介護労働に関する研究の多くは筋骨格系の負担に関連した腰痛問題に着目したものであった。しかし、介護労働者に対する社会的な重要性が増すにつれ、腰痛の問題も含めた包括的な労働安全衛生の視点からの改善が求められている。 前年度までの本研究の調査によって、介護労働者が抱える問題として、主に長時間夜勤や仕事量の多さ、あるいは仕事でのミスや失敗に対する不安などがあげられた。また、人間関係に起因する仕事でのストレス要因が多く見られ、利用者などからの暴力やハラスメントなどの特徴的なストレス要因も明らかにされた。 本年度では、上述のような介護労働者の健康や安全の問題を未然に防ぐ予防対策的な観点により、介護労働者が抱える疲労やストレスあるいは労働中の事故やニアミスに関するリスク認知の問題に着目し、調査を実施した。具体的には、15名の介護労働者を対象に2週間の観察調査を行い、夜勤を含む交代勤務や負担の強い勤務などの介護労働の勤務特性と関連して、1)同僚や利用者などの他者の疲労状態をどのように認知し、変化しているのか、2)ミスを事前に認知する能力がどのように変化しているのか、について明らかにすることを目的とした。そして、その種のリスク認知がどのような条件下で低減あるいは強化されるのかを今後、検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予定していたように、介護労働者の疲労・ストレスに関する問題の改善を念頭に置いたインタビュー調査、アンケート調査、睡眠観察調査の3つの調査を24年度内に終了することができた。25年度においては改めて調査を実施する予定はなく、全てのデータを取り終えた段階にある。現在は一般社会への知見の還元を目指して、労働安全衛生に関連する国内外のジャーナルに投稿するためにデータ解析を実施している。以上のことから、現在までの達成度を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
3ヶ年計画の本研究は初年度と次年度において、調査を実施し終え、すべてのデータを収集することができた。今後は、そのデータ解析及び論文化に力点を置いて作業を進める予定である。その際、本研究の成果が、直接的、間接的に介護労働者の労働条件の改善に結びつくよう、労働安全衛生の中でも介護労働者が多く参加するような場を狙って公表していくことを考えている。くわえて、調査データを解析する際にも、ある程度まとまった段階で、現場の介護労働者へ意見を求めることを予定している。それにより、本研究で得られた知見が研究のための研究に終始せず、着実に現場の問題解決へリンクするよう心がけて知見の一般社会への還元を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は3ヶ年計画の内の最終年度となる。上述したようにデータはすべて取り終えた段階である。そのため、次年度はデータ解析をメインとした予算の支出を予定している。主に、データを解析する上で研究協力が得られる者との打合せ旅費、調査データの入力への謝金、学会発表などで使用することを計画している。
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