研究課題
今後も進む我が国の更なる高齢化を受けて,介護サービス利用への需要は,今以上に高まっていくことが推測される.しかし,そのサービスの担い手である介護労働者の離職は今もって非常に高い状況にある.このことから,彼らが仕事に満足して長く働き続けられるために,労働環境の更なる改善に貢献できるような労働安全衛生研究が強く求められている.初年度の予備調査の結果から,介護労働者の抱えるストレスに関連した問題としては,同僚との人間関係や,長時間夜勤や仕事量の多さ,利用者などからの暴力やハラスメント,認知症利用者への対応,給与・待遇などがあげられた.それらの結果を受け,本調査では調査対象者を介護労働による負担が比較的高い認知症専門棟で交代勤務に従事する者とした.そこで,人間関係の悪化あるいは利用者からの暴力やハラスメントの根底にある一因として,他者とのコミュニケーションがかかわっているという仮説を立て,本調査では他者の表情から感情を読みとる力(情動認知)を主要な測定指標とした.現在もデータ解析の途中ではあるが,その結果から,相手が嫌悪を抱いているというようなネガティブ感情の認知は,日勤後に比べて夜勤後では,同じ顔を見ていたとしても,より嫌悪感を抱いていると感じる傾向が示唆された.さらに,その傾向は,自分の働いている棟において,近い将来に死に至ることが予見される利用者への看取り介護がある場合でも高まることも示された.その上,看取りの利用者がいる場合には,勤務後の眠気や疲労度の増大,さらには睡眠の質の低下まで生じる傾向も観察された.以上のことから,夜勤や,看取りなどの負担度の高い職場要因の影響も考慮した勤務のシフト編成あるいは休日の配置は,職員個人のみならず,職場全体のコミュニケーションあるいはケアの質の保全に寄与することが推察された.
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睡眠医療
巻: 8(1) ページ: 9-15