研究課題/領域番号 |
23730577
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平石 界 京都大学, こころの未来研究センター, 助教 (50343108)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 利他性 / 個人差 / 遺伝 / 進化 / パーソナリティ |
研究概要 |
利他性および公平感についての個人差と、その起源を探るために、大学生を対象とした実験(実験1および実験2)および双生児を対象とした実験(実験2および実験3)を実施した。 実験1では、独裁者ゲームと最後通牒ゲームのどちらを選好するか、ゲーム選択を場面想定法質問紙により調べた。いずれのゲームにおいても一定金額を匿名他者一名と自分の相手で配分することを求められるが、独裁者ゲームでは自分が配分額を一方的に決めることができるのに対し、最後通牒ゲームでは相手に配分提案への拒否権が存在する。相手に拒否権を渡さない独裁者ゲームを選ぶことが経済合理的と考えられるが、約半数の参加者が最後通牒ゲームを選択することが示された。実験2では、実験1の枠組みを実際に金銭をやり取りする経済学実験として実施した。場面想定質問紙であった実験1とは異なり、実験2は集団実験であり、ゲームの相手は匿名とされたものの、同室にいる誰かであることが明らかであったにもかかわらず、最後通牒の選択者は1割未満に減った。こうした選択ゲーム実験は先例がなく、二つの実験の相違が何から生じたのか含め、さらに検討が必要である。 実験3は、慶應義塾双生児研究プロジェクトに登録のある257名の双生児研究協力者(三つ子を1組含む)を対象に、慶應義塾大学キャンパスにおいて、独裁者ゲームおよび最後通牒ゲームを、戦略法により実施した。他者への利他性をより純粋に反映すると考えられる独裁者ゲームと、相手からの反発(罰)を考慮した上での行動を反映すると考えられる最後通牒ゲームを同一の参加者に実施することで、社会関係構造の違いに応じた"戦略的利他性"の個人差について、その個人差への遺伝要因および環境要因(家庭環境・家庭外環境)の相対的な影響力を明らかにすることが期待される。データについては現在、分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では双生児を対象とした実験データの収集は2年目以降に予定していたが、慶應義塾双生児研究プロジェクト自体の今後の計画を検討し、大学キャンパスにおいて実験実施が可能となった初年度に前倒しして、経済ゲーム実験を実施した。もっとも収集が困難と予測された双生児データについて、現時点で300名程度のデータが集められた。今後、データ分析結果によって、2年目、3年目の追加実験を可能とできた点で、前向きに評価している。双生児データ収集を前倒しした分、本来1年目に計画していた利他性のあり方の多様性についての調査は2年目の実施となる。これらについても最終的には双生児データの収集を予定しているが、質問紙調査を予定していることから、その収集は比較的容易と考えられる。以上の観点から「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
達成度評価にも書いたとおり、当初2年次以降に予定していた双生児対象とした経済ゲーム実験データについて初年度にある程度のサイズのデータが集められた。一方でこのために、多様な利他行動の網羅的リスト作成は2年目以降に持ち越しとなっているため、2年目は大学生および一般サンプルを対象とした調査によりこれを作成した上で、大学生を対象として身体形質、心理形質と利他行動の関係を探るための調査を行う。そして一般サンプルを対象としたオンライン調査も実施することを予定している。その結果を受けて3年目には、双生児を対象としたオンラインまたは郵送調査により、利他行動の多様性と個人差への遺伝要因および環境要因の構造を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
2年次は、大学生および一般サンプルを対象とした調査のための費用(実験補助者の謝金、回答謝金、調査会社委託費)および研究成果の報告費用(英文校閲費用、学会出張費用)が中心となる。3年目についても、双生児調査を調査会社に委託する予定であるため、原則として使途は同様となる。
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