研究課題/領域番号 |
23730577
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
平石 界 安田女子大学, 心理学部, 講師 (50343108)
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キーワード | 向社会性 / 個人差 / パーソナリティ / 遺伝 / 進化 |
研究概要 |
利他性についての個人差とその起源を探るために、一般サンプルを対象としたWeb調査を実施した。当初計画では、利他行動にかかわる網羅的リストの作成を予定していたが、大学生を対象とした実用的な利他行動尺度が開発された(SRAS-DR; 小田ら, 2013, 印刷中; 申請者も共著者の一名)ことを受け、本尺度の一般成人サンプルへの適用可能性を検討することが、当初の研究目標の達成のために適当であると判断した。SRAS-DRをパーソナリティ、社会的態度と同時に成人対象者に実施した。調査結果から、大学生を対象とした時とは、SRAS-DRとBig 5パーソナリティ次元との相関パターンが異なることが示唆されている。本データには年齢や性別、居住地域などの人口動態的データが含まれていることから、これらとの関連を見ることで、大学生データと一般成人サンプルの違いをもたらした要因を探り、一般成人対象により適した項目の選別を行うことを予定している。 初年度に収集したデータについては、研究会における報告などを通じて分析・検討をすすめているが、論文化に至っていない。大学生を対象とした最後通牒ゲーム・独裁者ゲームの選択ゲーム(場面想定法および現金を用いた戦略法実験)については、Big 5パーソナリティとの関連について分析を進めている。双生児を対象とした最後通牒ゲームおよび独裁者ゲームについては、遺伝環境分析を進め、弱いながらも遺伝の影響が見られることが示されつつある。しかし他国で行われたデータとは異なる結果であり、実験手続きの違いによるものか、文化的な差異が見られるのかについて、検討している。これらについては平成25年度に論文を投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「実績の概要」で述べたように。向社会性については、個人差を測定する尺度(SRAS-DR)が別に開発されたことから、その多様性について検討するための大きな手がかりが得られた。本尺度について700名からのデータを既に収集済みであり、かつこのサンプルには再アプローチが可能であることから、SRAS-DRを基準として個人差の多様性について検討する調査を実施することは比較的容易と考えられる。一方で、収集済みデータの論文化については遅れている面が否定できない。この背景に申請者の所属変更の影響があったことは影響が否定できないが、1年間をかけて研究体制の整備に務めたので、計画最終年度については予定されていたデータを収集し、論文化を進められるものと考えている。以上から、若干の遅れはあるものの、おおむね順調に進展していると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、向社会性についての基準となる尺度(SRAS-DR)をベースに、同一サンプルへの追加調査により、個人差をもたらす要因について検討することが一つとなる。また双生児を対象とした調査によりSRAS-DRのデータを収集する予定である。これらに加えて収集済みのデータについて論文化を進めることが計画最終年度の重要な仕事となる。大学生による選択ゲーム(最後通牒ゲームと独裁者ゲームの選択)で1本、双生児を対象とした最後通牒ゲームおよび独裁者ゲーム実験で1本を執筆し投稿する予定である。加えて一般成人サンプルにおけるSRAS-DRの結果についても、データ収集と並行して分析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
双生児ならびに成人を対象とした調査を実施する予定であり、調査会社への調査委託費が大きな部分を占める予定である。その他に、国内外の学会における報告および資料収集、投稿論文の英文校閲費ならびに投稿費に使用する計画である。
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