研究課題/領域番号 |
23730580
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
毛 新華 神戸学院大学, 人文学部, 講師 (90506958)
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キーワード | 社会的スキル / 日本文化適応 / 中国人留学生 |
研究概要 |
平成25年度には,申請書に記載された研究1と研究2の完成に目指して,研究を展開した。 研究1の目的,すなわち,「中国人留学生の日本社会における『日本人との対人関係の形成』に関する特有の問題点を抽出する」ことに照らし合わせて,自由記述調査を展開した。自由記述調査は,実施計画に沿って,既存研究の成果を取り入れながら,来日してから異なる滞在期間の留学生(短期滞在と長期滞在),そして留学生を指導・世話する日本人を対象に実施した。上記の各々の対象者群から得られた記述がまとめられた。また,短期滞在と長期滞在の留学生の結果の比較,そして,留学生自身と日本人側の意見の比較も行った。異なる観点から留学生の日本人との対人関係の問題点が明らかとなった。これら一連の結果を2014年度の日本社会心理学会,日本グループ・ダイナミックス学会にて発表する予定をしている。 研究2の目的は,「留学生の各適応段階において,中国文化と対照的に捉える日本文化における対人関係に必要とする社会的スキルの種類とレベルを確認し,日本文化適応のプロセスを社会的スキルの側面から明らかにする」ことである。この目的を実現するために,留学生の日本人との対人関係の適応次元を明らかにした。具体的に,研究1で明らかにした留学生の適応上の問題点をもとに,候補項目を作成し,中国文化的社会的スキル尺度,日本文化的社会的スキル尺度,さらに文化共通的社会的スキル尺度を取り入れて,質問紙調査を行った。留学生における日本的対人関係適応尺度の開発を試みた。また,この尺度の他の文化的社会的スキルとの関係が検討された。研究2の結果を,2014年度の日本心理学会にて発表する予定をしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度から日中両国に横たわる一連の政治問題は,平成25年度から改善の兆しを見せ始めた。これを機に,平成24年度の研究空白期間(本研究の性質上,政治的要因による影響が予想されるため,研究を一時休止した)を埋めるために,できるかぎりこれまで発生した研究の遅れを取り戻す努力を行った。また, 3年間の研究計画を4年間に延長した。平成26年度を最終年度とした場合,研究目的の最終達成に向けて,ほぼ予定通りに推移していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度にあたり,本研究では,中国人留学生の日本文化適応のトレーニングのプログラムを編成,実践を行い,プログラムの有効性を検証する研究3を行う。 まず,研究1と研究2で明らかにした日本文化適応に中国人留学生に特有なニーズをもとに,Gudykunst & Hammer(1983)が指摘した異文化のコミュニケーションに関する体験学習による異文化適応の社会的スキル・トレーニング(SST)の考え方を活用して,トレーニングのプログラムを編成する。そして,これらのプログラムを異なる滞在期間の中国人留学生を対象に,一定の期間を設けてSSTの実践を行う。その際,申請者のこれまでのSSTのファシリテーター経験を活用する(補助ファシリテーター2名)。また,トレーニングの前後に,研究2で開発した「日本的対人関係適応尺度」をはじめとする自己報告の質問紙調査,そして会話実験を設けて,トレーニングの効果を確かめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の3年間計画を4年間に延長し,2014年度を最終年度としたため。 上記の計画の実行には,異なる滞在期間の中国人留学生の募集に,申請者がこれまでの研究で依頼したことのある複数の留学生を受け入れる教育機関を活用する。そのために,受け入れる機関と調整してくれるコーディネーターに謝礼を支払う予定をしている。SSTの実施には,参加者である留学生の拘束時間が発生すると考えられるので,拘束時間に対する謝礼を支払う予定をしている。会話実験には,協力者も必要となり,協力者を対象とする謝礼を支払う予定をしている。 その他,データの迅速な分析のために,データ入力や基礎的集計作業を2名の研究補助者に依頼する予定をしている。それに伴う謝礼が必要となる。 なお,研究成果を発表するために,学会参加費と国内外の旅費が必要となる。
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