研究課題/領域番号 |
23730581
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大西 賢治 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (30547005)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | ソーシャル・ネットワーク / 毛づくろい / 子ザルが受けた養育 / 子ザルの社会化 / 性格関連遺伝子 / 互恵性 / マターナル・エフェクト / ニホンザル |
研究概要 |
本研究課題の目的は、以下の3点である。まず1点目として、ニホンザルの社会がどのようなネットワーク構造になっているのか、集団の構成個体の変化がソーシャル・ネットワーク全体にどのような影響を与えるのかを検討する。2点目として、ソーシャル・ネットワークの維持に重要な役割を担っている個体を特定し、どのような個体が社会の維持に重要なのかを分析する。3点目として、未成体が発達に伴ってどのようにソーシャル・ネットワークに組み込まれていくのかを明らかにする。研究課題の初年度である平成23年度は、データ収集・解析の環境を整え、予備観察を経て研究に必要なデータ収集を開始し、予備的な分析を行った。データ収集・解析のためには観察データ収集・解析用ソフトウェア「ジ・オブザーバーXT」一式が必要であったが、平成23年度は研究費が全額交付されるかが不透明であったため、これらの機器の納入が遅れた。そのため、当初の予定から少し遅れ、秋頃に観察環境が整った。その後、勝山ニホンザル集団を対象とした野外行動観察を開始した。行動データの収集は平成23年度に収集予定のデータ量を下回ったが、残りの2年間で調節し、当初の予定データ量を収集できる見込みである。目的2に用いる性格関連遺伝子に関するDNAデータは継続的に糞サンプルを採取した。目的3に用いる子ザルが受けた母ザルからの養育行動のデータは2005-2008年に収集したデータを用いる。平成23年度中に養育行動データを本研究課題に利用できる形に加工し、分析を行った。分析の結果、勝山ニホンザル集団における子育てスタイルのばらつきが明らかになり、3点目の目的の分析が十分に可能であることが確認された。この子育てスタイルについての結果は現在投稿準備中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では、膨大な行動データを収集するため、観察データ収集・解析用ソフトウェア「ジ・オブザーバーXT」を使用して行動データを記録する。本機器の導入によって、データを起こす作業を完全に省くことができる。平成23年度は、当初学術研究助成基金助成金が全額交付されるかが不透明であったため、観察データ収集・解析用ソフトウェア「ジ・オブザーバーXT」の導入が遅れた。そのため、行動データの収集開始が遅れるとともに、予備観察データ等の処理効率が下がった。上記の理由により、平成23年度は収集した行動データ量が当初の目的を下回ったが、残り2年でデータ収集計画を調整し、目標データ量を収集する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、各種データの収集を行う。データの収集には同一の方法を用いる。2012年4月から2013年12月までの間、に約140日間、約420時間の観察を目指す。また2012年秋以降、分析可能となったデータから順次分析を開始する。特に、集団の構成個体の変化がソーシャル・ネットワーク全体にどのような影響を与えるのか、ソーシャル・ネットワークの維持に重要な役割を担っている個体はどの個体なのかに関しては、平成24年度中に分析を行うことを目標とする。各分析の結果が得られ次第、学会等で発表し、論文としてまとめていく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究で最も重要なデータ収集、データ解析に必要な備品は平成23年度中に準備を終えているため、平成24年度は行動データの収集と分析結果の発表に必要な旅費が主な使用用途となる。データ収集の為、月に2回、合計6-10日間フィールドへ渡航する予定であり、15-20万円程度をデータ収集のための渡航費として使用する予定にしている。また、2012年8月にメキシコで開催される国際霊長類学会へ参加し、予備分析の結果を発表し、今後の研究方針や分析方法に関して情報を収集する予定である。そのため、40万円前後を国際学会へ渡航費として使用する予定である。
|