研究概要 |
今年度は主に以下の2点を明らかにした。 第一に、病院に勤務する医師、看護師、事務職を対象とする大規模調査データを分析し、リーダーによる罰行動の行使がそのリーダーへの信頼に与える影響を明らかにした。具体的には、上司からの罰の被行使が上司への信頼を高めるのは親しい間柄にある場合であること、一方組織規模が小さい場合、上司による他メンバーへの罰の観察が上司への信頼を高めるのはその罰が公正な場合であることを示した。また、予測しなかった結果として、規模の小さい病院においては、公正に罰することのない上司が(能力以下の働きをした)自身を叱りもしない場合に回答者がその上司を信頼できなくなることも示された。これらの結果は、課題に関連する関係性においても社会的動機のもつ影響が当事者と局外者とで異なることを示すものであった。 第二に、回避動機の伝染プロセスが接近動機の高さによって調整される可能性を社会情緒的な関係において実証した。具体的には、大学生友人ペアを対象とするパネル調査の結果、初期時点で接近動機が高い場合、回答者の回避動機の高さは1ヶ月後の相手の回避動機を高めた。この結果は、回避動機のもつあいまいさを反映したものだといえ、回避動機の充足がなぜ容易ではないのかを示唆するものであった。 これらの成果の一部を、European Congress of Psychology, Asian Association of Social Psychology,日本グループ・ダイナミックス学会、産業・組織心理学会において発表した。
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