研究課題/領域番号 |
23730585
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
麻生 良太 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (10572828)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 就学前期 / 感情理解 / 対人関係 |
研究概要 |
当初,本研究では,言語能力・自伝的記憶能力・メタ表象能力を,時間的広がりを持った感情理解の発達を支えるための基礎要因として扱うことを目的とした。 しかしながら,時間的広がりを持った感情理解の発達を支えると考えられるこれら3つの基礎要因を扱う前に,「なぜ幼児期の子どもが時間的広がりを持った感情理解に着目するのか」を明らかにすることとした。具体的には,主人公の感情経験に関わる他者の意図や内的特性に対する幼児期の子どもの理解と,時間的広がりを持った感情理解との関連を明らかにすることを目的とした。これは,本研究が幼児教育において近年強調されている,子どもの「豊かな心や健やかな体の育成」の達成に寄与するために,子どもの感情についての知識(以下,感情理解)の発達を,感情理解の機能である「人間関係の維持」という視点から明らかにすることを目的としているからである。 時間的広がりを持った感情理解への着目に関わる要因としては,1つ目として心的評価に関する情報の明示の程度(過去の出来事における主人公の表情の提示,主人公の心的状態や内的特性の提示),2つめとして現在の状況と感情の間の不一致,そして3つ目として認知的手がかりの提示があるといわれている。その中でも認知的手がかりの提示に関して調査を行った。 幼児期の子どもに,時間的広がりを持った感情を理解するための認知的手がかりの機能性の認識と,認知的手がかりである「人」に対して付与した内的特性の一貫性を認識することの間に関連があるかを調べたところ,年齢に関係なく,時間的広がりを持った感情を理解するために認知的手がかりを利用することと,内的特性の一貫性との間には関連があるといえるということが明らかとなった。今回の結果は,対人関係が時間的広がりを持った感情理解を「知識」として構成していくために必要ということを明らかにしている点で,重要だと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,本研究では,言語能力・自伝的記憶能力・メタ表象能力を,時間的広がりを持った感情理解の発達を支えるための基礎要因として扱うことを目的とした。 しかしながら,時間的広がりを持った感情理解の発達を支えると考えられるこれら3つの基礎要因を扱う前に,「なぜ幼児期の子どもが時間的広がりを持った感情理解に着目するのか」を明らかにすることとした。 以上の点により,交付申請時よりも研究の目的の達成度はやや遅れているが,今年度行った研究により,発達に関する基礎的なデータを得ることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,幼児教育において近年強調されている,子どもの「豊かな心や健やかな体の育成」の達成に寄与するために,子どもの感情についての知識(以下,感情理解)の発達を,感情理解の機能である人間関係の維持という視点から明らかにすることを目的とする。具体的には,幼児の人間関係場面に密着し,縦断的研究として行動分析・発話分析をおこなう。また,予備的研究として,横断的研究を行うことで,これまでの研究では明らかにされてこなかった,幼児が持っている感情についての豊かな知識と,その知識が顕在化する状況・背景を明らかにする。そしてこれからの教育実践に対して,今回の結果から何を提案できるかを考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は計画通りに研究が十分進まなかったため,実験協力者への謝金および学会への出張に関して,研究費を使用することができなかった。 次年度の研究費は,物品としてパソコン,テキストマイニング(記録し,書き起こした逐語録をデータ化し,分析するために必要)の購入,旅費として,教育心理学会,発達心理学会,教育工学会,教育実践学会,九州心理学会への出席,発表,アメリカ心理学会への出席,そして謝金として園や家庭での子どもや養育者の姿の記録や,その記録の書き起こしのために雇いあげる学生のために計上した。
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