研究課題/領域番号 |
23730588
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
新谷 優 法政大学, グローバル教養学部, 准教授 (20511281)
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キーワード | 甘え / 適応 / 対人関係 |
研究概要 |
本研究の目的の一つは、甘えが、新入生の対人関係や適応にどのように影響するのかを明らかにすることである。当該年度は,前年に集めたデータの分析を行った。共分散構造分析を行ったところ,入学時に自分は甘える傾向があると答えた学生ほど,学年末の大学生活の満足度が高いことが明らかになった。同様に,入学時に甘える傾向のある学生は,学年末に居心地の良さを感じ,課題・目的意識も高かった。学生の外向性も社会的スキルも入学時の甘える傾向と強い正の相関があったが,これらの影響を統制しても,入学時の甘えは学年末の満足度,居心地の良さ,課題・目的意識を有意に予測していた。大人の甘えは本人の未熟さを表し,不適切な言動を含むと言われるが,本研究の結果は,助けを求めるという点と人間関係を促進するという点において,甘えは新環境への適応を助けると考えられる。 また,前年度に集めた友人同士のペアデータの分析も行った。友人同士で,一つの甘えの出来事について想起してもらい,その時の感情やコントロール感,親しさの認知,負担の度合いなどを評定してもらっていた。甘える側と甘えられる側が,それぞれどのような要因で甘えをうれしく感じ,甘えを受容する(受容してもらえると思う)か,さらに甘える側は,相手の心理状況をどの程度推測できているのか検討した。その結果,まず,甘えられる側は,相手を信頼し,相手との関係を親しく感じ,コントロール感があり,甘えを受け入れるだけの資源があると感じるほど,甘えをうれしく感じ,甘えを受容することが確認できた。さらに,甘える側と甘えられる側の信頼と親しさの感じ方のズレが小さいほど,甘えられる側は,甘えをうれしく感じ,受容することが明らかになった。つまり,甘えられる側が快く甘えを受け入れるには,双方が同程度に互いを親しく感じている必要があるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画よりも、研究の目的の達成は遅れている。当初の予定では,平成25年度末に本研究課題を終了させる予定であった。しかし平成25年1月の出産・育児に伴い,当初予定しただけの研究時間が確保できず,データの分析は行ったものの,その論文執筆と学会発表はできていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,社会的ネットワーク縦断調査とペア調査の結果を学会で発表し,それぞれ論文にして投稿する。ペア調査で得られた自由記述による甘えのエピソードの内容分析を行い、新たな仮説を立てるのに役立てる。研究費の残高は,学会や研究会への出席や,英語論文の校閲費にあてる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に学会発表と論文執筆を予定していたが,出産・育児のためどちらも叶わなかった。 論文執筆および学会発表に使用するため,持ち運びのできる小型のノートパソコンを購入する。論文に仕上げるために追加データが必要であり,調査参加者への謝礼金とリサーチ・アシスタントへの謝礼金を支払う。自由記述のコーディングをするために,リサーチ・アシスタントへの謝礼金としても用いる予定である。
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