研究課題/領域番号 |
23730589
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
八木 善彦 立正大学, 心理学部, 講師 (80375485)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 選択 / 満足度 / 意思決定 |
研究概要 |
消費者は通常,選択肢のより多い状況を好み,その数を最大化するように努める。しかし近年の消費者心理学的研究から,選択肢の増大は,選択の放棄や選択結果に対する満足度の低下を引き起こすことが明らかにされてきた(選択のパラドクス)。この現象は,配偶者の選択といった高関与状況のみならず,食料品の選択といった低関与状況においてさえも生じる。これまで,現象の生起には「あり得る全ての選択肢の中から,最良の選択を行う」ことに固執する性格傾向(追求者傾向)が関係していると考えられてきた。しかしながら,特に低関与状況においては,この仮説に関する実証的知見が得られていない。そこで本研究では,低関与状況において,性格傾向が選択のパラドクスに及ぼす影響を実験的に検討した。 【研究1】大学生40名(女性24名)を対象とする個別実験を行った。参加者は質問紙調査への回答という名目で,実験室に案内された。質問紙として日本語版追求者尺度が用いられた。質問紙回答後,参加者には謝礼として文庫本一冊が贈呈されると伝えられた。参加者は,文庫本の選択前に謝礼内容に対する魅力度を,選択後に選択結果に対する満足度を,それぞれ回答するよう求められた。選択肢数は6冊または29冊の2条件が設けられた。分析の結果,魅力度,満足度ともに,選択肢数または追求者傾向の高低による影響は認められなかった。ただし,性差の影響がわずかに認められた。【研究2】そこで対象者を全て女性とし,大学生44名による個別実験を行った。方法は研究1とほぼ同様であった。実験の結果,追求者傾向の低い参加者群においてのみ,魅力度は29冊条件,満足度は6冊条件がそれぞれ他方を上回る結果となり,選択のパラドクス現象の生起が確認された。 これらの結果は,低関与状況においては,性別および追求者傾向という二つの要因が選択のパラドクス生起に影響を及ぼす可能性を示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現実場面(スーパーマーケット)で行われた先行研究のパラダイムを,実験室内で再現する方法を概ね確立することが出来た。また,PCを用いた認知心理学的実験に用いる刺激の収集やプログラム作成も開始している。以上のことから,本研究の計画は,概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては,上述の疑似フィールド実験による検討に加え,PCを用いた認知心理学的実験を行う予定である。フィールド実験においては,性差や選択対象となる商品の種類などを考慮し,より安定的に選択のパラドクスが生起する環境を探求する。また認知心理学的実験においては,コンピュータ画面上に6または29種類の商品画像を提示し,それぞれ魅力度と満足度を訪ねる予定である。コンピュータ実験においては,選択までの時間制限や選択行動の繰り返し数などの物理的変数に加え,ワーキングメモリ負荷などの心理的変数の操作が可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
認知心理学的実験においては,多量の刺激画像を安定的に提示・制御可能な,実験用PCを購入する。またフィールド実験においては,選択対象となる商品をあらたに購入する予定である。
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