研究課題/領域番号 |
23730589
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
八木 善彦 立正大学, 公私立大学の部局等, 講師 (80375485)
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キーワード | 選択 / 満足度 / 意思決定 |
研究概要 |
昨年度までの本助成研究は,選択のパラドクス現象を再現可能とする実験室内実験の開発を目的として行われた。その結果,特定の性格傾向を強く持つ,女性の参加者においてのみ,選択のパラドクスの生起を確認することができた。本年度の助成研究の目的は,1)性格傾向や性別にかかわらず,現象を生起させる実験室内実験の開発と,2)現象の生起が観察可能なPC実験の開発,の2点であった。 【研究1】大学生48名を対象とする個別実験を行った。実験室内の卓上には,40種類の食品カテゴリ(ガム等)毎に,6品目または24品目の商品が並べられていた。半数の参加者には,全てのカテゴリについて6品目の商品が提示され(少選択肢条件),残りの半数の参加者には,40種類中4種類について,24品目の商品が並べられていた(多選択肢条件)。参加者の課題は,カテゴリ毎に,1)最も好ましい一つを選び出すことにどの程度の楽しさを感じるか(魅力度),2)実際に選んだ商品についてどの程度満足を感じるか(満足度),を回答するように求めた。両選択肢条件ともに,多選択肢条件において24品目が並べられた商品カテゴリのみを分析の対象とした。実験の結果,魅力度については多選択肢条件でより高い評価を受けた一方で,満足度については選択肢条件間の差は消失した。 【研究2】大学生40名による個別実験を行った。48種類の商品カテゴリ(冷蔵庫等)毎に,6品目または30品目の画像を一度に提示し,研究1と同様の質問をPC上で行った。どの商品カテゴリが6品目(あるいは30品目)で提示されるかは,ランダムとされた。魅力度と満足度を続けて尋ねる条件と,すべての商品カテゴリの魅力度を尋ねた後,選択した商品の満足度を全て尋ねる条件が設けられた。PC実験の結果,いずれの評定のタイミングでも,選択のパラドクス現象は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験室実験においては,実験参加者の性別や性格傾向にかかわらず,現象の再現を可能とする課題の開発が未だ完成していない。選択肢の少ない状況において,選択肢の多い状況と比較して,選択の満足度が高まるような環境を速やかに確立しなければならない。また,PC実験においては,現象の再現を可能とするよう,大幅な改変を加える必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては,可及的速やかに上述の実験室内実験およびPC実験による現象の再現性を高める予定である。その後,選択までの時間制限や選択行動の繰り返し数などの物理的変数に加え,ワーキングメモリ負荷などの心理的変数の操作を行い,選択のパラドクス現象の生起要因を特定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
PC実験における新たな画像の収集,および実験制御プログラムの改変のために,研究補助アルバイトを雇用する。また,実際に商品を提示する実験室実験においては,選択対象となる商品をあらたに購入する。さらには,研究成果を公表するため,論文印刷費等を使用する予定である。
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