研究課題/領域番号 |
23730590
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
高橋 尚也 立正大学, 心理学部, 講師 (10581374)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 社会心理学 / 国際情報交換 / 韓国 / コミュニティ心理学 / 政治心理学 |
研究概要 |
本申請研究において、平成23年度は、住民と行政との協働による受益性の内容を拡張することを目的としていた。その一環として、フリーマーケットに参加していた人に対する半構造化面接調査と、フリーマーケットへの参加者および近隣住民106名を対象とした質問紙調査が実施された。その結果、30代と40代が60代に比べフリーマーケットへの関心が高い傾向がみられ、重回帰分析の結果、フリーマーケットへの参加頻度を規定していた要因は、フリーマーケットによる受益性の多さであった。他方、フリーマーケットへの関心を規定していた要因は、地域への愛着の低さ、購買を楽しもうとする志向、フリーマーケットによる受益性であった。これらの結果から、日本におけるフリーマーケットへの参加は、直接的にあるいは間接的にフリーマーケットから受益性を知覚することによって促進されることが確認された。 また、高橋(2007)によって収集された論文化された住民と行政との協働事例に関する内容分析結果を、多変量解析手法(数量化理論第3類)を用いて再分析した。この再分析によって、従来解釈にとどまっていた、協働の成否の記述と協働内容、住民と行政との相互作用の共起関係が明解に分析可能となった。 さらに、平成23年8月には、韓国心理学会に参加し、韓国における地域コミュニティの研究動向と、研究関心の多寡について情報収集を行った。その結果、地域コミュニティに注目した研究が少なく、国レベルの政策の影響力が強いため、単純に日本との比較が難しいと判断され、平成23年度中に実施を予定していた韓国調査は、平成24年度初旬に延期された。 この他に、本申請研究で平成24年度後半から実施予定の調査地点についての検討も行った。現段階では、埼玉県の「キャラクター」を用いたまちづくりを実施している自治体や静岡県内の防犯まちづくりを実施している自治体が候補に挙がっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、神奈川県内と東京都内のフリーマーケット参加者に対する半構造化面接調査と質問紙調査を実施でき、受益性の効果を確認でき、順調に研究が進行している。この研究知見は、平成24年6月に行われる第4回国際コミュニティ心理学会議での発表が採択されている。また、韓国における受益性と市民参加に関わる調査実施は、平成24年度の実施と計画変更したものの、平成24年8月に韓国心理学会に赴き、研究者との交流の上で韓国調査の準備をすすめることができたことは大きな成果であった。さらに、高橋(2007)のデータの再解析は、紀要論文に成果を公表することができた。 一方、これから国内調査を進める上での下準備を行うことができたことも成果である。例えば、調査地点として「キャラクター」を用いたまちづくりを行っている知見を候補に挙げられたことは、協働の認知度が高くなる要素を含んでいると考えられ、調査による検討がしやすい地点と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に実施を見合わせた受益性チェックリストの作成を目的とした韓国調査を実施する。この調査の実施を平成23年度見合わせたために、平成23年度未使用額が発生し、平成24年度に執行する。その上で、当初の予定通り、埼玉県内あるいは静岡県内でのランダムサンプリングを用いた回顧法調査を実施し、協働への参加前後の意識過程を多変量解析手法によって推定する。これによって、協働における受益性チェックリストの完成が見込まれる。調査規模は800名程度を予定している。平成23年度中の研究知見は、平成24年度中に国際学会において発表する。 平成24年度後半からは、協働の開始時・展開時の住民意識に関する時系列調査の第一波を計画し、実施に移すよう努める。平成25年度は、協働の展開時の住民意識に関する第二波調査を実施し、意識変化を実証的に分析する。2時点のデータが揃えば、協働への参加を規定する受益性の側面やその他の要因を明らかにすることができる。 平成25年度後半には、本申請研究の個々の知見を統合した理論化を行い、「受益性」の観点から、実証的知見に裏付けられた協働支援策の提唱を行う。なお、研究知見の公表にあたっては、これまで国内での公表を主としていたが、東日本大震災後、日本における地域力やコミュニティ開発に注目が集まっていることをふまえ、今後は海外学会や国際学会での公表も視野に入れた公表計画に変更して研究を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、平成23年度に実施を見合わせた受益性チェックリストの作成を目的とした韓国調査、日本におけるランダムサンプリングを用いた回顧法調査の実施を計画している。両調査ともに調査の実施や実査の管理に、消耗品を含めた多くの費用がかかると予想している。このうち、韓国調査の実施には、平成23年度の未使用額を充当する。 また、平成23年度中に実施したフリーマーケットへの参加に関する調査結果を、国際コミュニティ心理学会議(スペイン・バルセロナ)や国内学会で発表するための渡航費や、平成23年度中の研究知見の公表に関わって費用発生が見込まれる。 さらに、協働時の時系列調査の足がかりとして、当該地への出張旅費や、地域資料の収集などにかかる図書資料費も見込まれている。
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